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その他ビジネス 公開日: 2021.12.23

働き方改革で生じる管理職への影響は? 役割や改善策を解説

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さまざまな企業で推進されている働き方改革によって、一般の社員における労働環境は徐々に改善されてきているが、一方で管理職にはしわ寄せが来ているケースも一部ではある。本記事では働き方改革における管理職への影響や原因、改善策を徹底解説する。

【画像】Shutterstock

目次

管理職の法的な定義とは何か?

 管理職とは労働基準法にて「管理監督者」と呼ばれ、下記のように定義されている。

“事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者”
 また、厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署が発表する下記の資料において管理職(=管理監督者)とは次のように定義付けられている。

“「管理監督者」は労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいい、労働基準法で定められた労働時間、休憩、休日の制限を受けません。「管理監督者」に当てはまるかどうかは、役職名ではなく、その職務内容、責任と権限、勤務態様等の実態によって判断します。”
 上記を踏まえて管理職とは、ほかの社員を管理・監督したり労務監督の業務を行ったりしている立場の人を指す。チームや会社全体の方向性などを決定する権利や責任を持っている人のことで、役職名は関係ない。

働き方改革関連法による管理職の変更点とは?

【画像】Shutterstock
 2019年4月に大きく改定された働き方改革関連法において、管理職が関わる変更点を三つ挙げていこう。

新設ルール①上限を超えた残業には罰則が課せられる

 まず大きな変更点として挙げられるのは、残業時間に上限が定められた点だ。日本の法律では基本的な労働時間が「1日8時間、週40時間」と決められている。これを超えて労働させる場合には、事業者と社員の間で36協定(労使協定)を結ばなければならない。

 そして36協定にも「月45時間、年360時間」を超える労働は禁止されている。しかしこの上限を超えて労働させていても、従来は行政指導が入る程度でこれといった罰則はなかった。それが今回新設されたルールでは36協定の上限を破って労働させた事業者には罰則が課せられる。また、臨時的な事情により月45時間を超える場合でも、年720時間以内・月100時間未満・6カ月月平均80時間以内の時間外及び休日労働に抑えなければならない。

 一方、管理職は引き続き労働基準法に記載のある「労働時間」の規定が適用されないため、36協定の適用対象外とされている。しかし、管理職は以前よりも厳格に部下の労働時間が規定よりも超過しないよう業務量を調整していく必要がある。

新設ルール②有給休暇を取得させるための時期指定義務

 社員に年間で最低5日間の有給休暇を取得させるため、事業者が有給休暇の時期指定をするように義務づけた。また、管理職についても年10日以上の有給休暇がある場合は同様の消化義務がある。有給休暇は基本的に自由に取得できる制度であったが、職場の雰囲気や仕事の状況によっては申し出づらいと感じる人が多かったため、日本の有給休暇取得率は49.4%と低かった。
 この新設ルールが設けられたことで、対象の社員においては全く有給休暇を取得できないといった状況を回避できる。対象となるのは半年以上勤務していて、かつ全労働日の8割以上出勤している社員だ。管理職は社員が計画的に有給休暇を取得しやすい環境を整える必要があり、休暇を取った際に組織の生産性が低下しないよう配慮する必要もあるだろう。

新設ルール③労働時間の把握に関する義務化

 労働時間の把握に関する義務化も行われた。従来では残業が月100時間を超えた社員から申し出があった場合、医師による面接指導を実施するように義務づけられていた。これは企業規模に関係なく実施しなければならない法律だ。

 新設ルールでは残業時間が月100時間から80時間に短縮された上に、これまでは対象外となっていた管理職や裁量労働者も対象として含まれるようになったのだ。加えて管理職の労働時間を把握することが任意から義務となったため、事業者は客観的な方法で記録することが求められるようになった。

働き方改革における管理職の役割

 次に働き方改革における管理職としての役割を三つ紹介する。

役割①労働時間や有給休暇の状況把握

 まずは管理職として部下の労働時間や有給休暇の状況を把握するのが重要だ。働き方改革で新設されたルールによって残業時間の上限を超えないように注意したり、年間で最低5日間の有給休暇を取得させたりしなければならない。

 こうした法律に則り適正な労働をしていくためには、「部下の今月の残業時間はどれくらいか?」や「どれくらい有給休暇を取得しているのか?」などを把握しておく必要がある。

役割②業務効率化を狙った業務の可視化

 残業時間に上限が設けられたため、必然的に短縮された労働時間内で業績を維持していかなければならない。そのためには業務を効率化し労働生産性を維持・向上させる必要がある。

 そこで役に立つのが業務の可視化だ。例えばマニュアルを作成して業務の見直しや改善を実施すれば、省いても問題ない無駄な業務が見つかる可能性もある。またメンバー同士でタスク管理できれば、お互いの進捗を把握し効率よく仕事を進められるだろう。こうした業務の可視化を率先的に実施するのも管理職の役割と言える。

役割③部下に対して積極的に働きかけ労働意識を改革する

 前述の通り短くなった労働時間内でいかに成果を上げるかが重要であるため、管理職は部下に対して積極的に働きかけて労働意識の改革を図る必要がある。そのため部下と密にコミュニケーションをとりモチベーションをアップさせたり、勉強会や研修の実施によるスキルアップを図ったりといった施策が重要だ。

働き方改革で管理職の負担は増えた?

 働き方改革によって管理職の負担は具体的にどう増えたのだろうか。下記のグラフはパーソル総合研究所が調査した「中間管理職の就業負担に関する定量調査」である。
 同調査によると、働き方改革が進んでいる企業で管理職の業務量が増加したと回答した人の割合は62.1%だ。一方で働き方改革が進んでいない企業で管理職の業務量が増加したと回答した人の割合は48.2%。この結果から、働き方改革が推進している企業ほど管理職の業務量が増加しているのが読み取れる。

 またリクルートスタッフィングが行ったアンケート調査によると、管理職で業務量が増えたと回答した人にその業務内容を聞いたところ次のような結果となった。
 働き方改革によって業務量が増えたと感じている管理職が残業しているときに行っている業務内容は、「所属部署・課における管理業務」が71.7%、次いで「部下のサポート業務」が58.5%であった。

 二つの調査によって浮かび上がってきた課題は、働き方改革によって多くの社員の労働環境が改善されている反面、そのしわ寄せが管理職に及んでいることだと言えるだろう。

管理職にしわ寄せがきている働き方改革

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 では、なぜ管理職に働き方改革のしわ寄せがきているのかその原因を三つ紹介する。

原因①労働時間や有給休暇の把握・管理

 一つ目の原因は労働時間や有給休暇の把握・管理だ。働き方改革によって残業時間の上限を守らなければならなかったり、有給休暇の時季を指定して最低5日間取得させなければならなかったりと、管理職が監督する項目が増えた。

 具体的には有給休暇の時期指定をするのにプロジェクト全体のスケジュールを細かく把握したり、繁忙期に有給休暇を取る社員が重ならないように調整したりと、これまでの業務以外にも監督業務が追加されている。

原因②残業や業務量の増加

 部下の残業時間の上限を超えないようにするため仕事が途中であっても切り上げさせ、間に合わない仕事は管理職が肩代わりして残業するようにしている企業も少なくない。中には残業だけでは仕事が終わらず、管理職が休日出勤して仕事を処理している場合もある。

 このように一般の社員における負担は減ったものの、根本的に労働環境が改善されたわけではないため管理職に負担が移動しただけとなっている。

原因③綿密なコミュニケーションの徹底

 三つ目の原因はリモートワークによって発生した綿密なコミュニケーションの徹底だ。新型コロナウイルス感染症の影響において感染対策をしながら仕事ができる環境を整え、自由な働き方を選択できるようにするため、多くの企業がテレワークを導入した。

 その結果発生した課題の一つが、部下とのこまめなコミュニケーションだ。顔の見えない部下の勤怠管理以外にも、どのような戦略で顧客を獲得・拡大しているのか、どのような方法で成果を上げているのかといった状況把握を細かくしなければならない。自由に働いてもらうためには徹底されたコミュニケーションや管理体制が必要不可欠となる。

管理職の負担を解消するには?

 続いて管理職にのしかかる負担を解消させるための改善策を三つ見ていく。

負担を減らすための改善策①管理職の裁量権を拡大させる

 まずは経営陣も協力して管理職の裁量権を拡大させよう。意思決定時やトラブル発生時などで管理職が迅速に動けるようになれば、負担軽減や時間削減が見込めるからだ。

 例えば現場の状況や社員の性格などに配慮しながらプロジェクトメンバーを選抜できるようにしたり、ただマニュアル通りにこなせばいいルーティンワークの外注化を決定できるようにしたりなど、管理職が持つ決定権を広げる。

 こうした裁量権を拡大させられれば、管理職がわざわざ自分の上司に許可を取る手間もなくなりスムーズに仕事を進められるだろう。

負担を減らすための改善策②業務を棚卸しして効率化を図る

 管理職の負担を減らすためには、業務を棚卸しして効率化を図るのも有効だ。業務自体が減り効率的にこなせるようになれば、管理職の業務も実質的に減らせるだろう。

 具体的には現状で課題を感じている業務を一つずつ書き出し、どの業務が無駄なのかを明確化させよう。そのあとに無駄な業務を省けるのかを検討する。もしも必要な業務ではあるが時間や手間が掛かっている業務を見つけた場合には、ITツールを使って効率化を図れないか考えてみよう。

負担を減らすための改善策③コミュニケーションツールの導入

 部下とのコミュニケーションを図る際にITツールを取り入れるのも一つの手段である。メールや電話でもコミュニケーションは取れるが、複数人もの部下に状況確認したい場合にはなかなか難しい。

 そこで社内SNSやビジネスチャットツールなどを導入し、円滑なコミュニケーションを図れれば管理職の負担は大きく減らせるだろう。

管理職が取り組むべき働き方改革の進め方とは?

 最後に管理職が取り組むべき働き方改革の推進方法を三つのステップで紹介しよう。

進め方①現状を把握して課題を明確化させる

 始めに現状の把握をして自社が抱える課題を明確化させることが重要だ。真の課題が何なのかがわからなければ解決策も見いだせない。例えば明らかに無駄な業務はないか、自分自身が部下に命じる指示の中で無駄な指示はないか、有給休暇が取れていない部下はいないかなどに注目しながら課題を見つけよう。

進め方②解決策の検討・実施

 一つ目のステップで課題が見つかったら、その課題をクリアできる解決策の検討・実施をする。具体的な解決策を例に挙げるならば次のような施策が考えられるだろう。

・部下のスキルを把握し、適材適所になるように人員配置を見直す
・非効率な業務を改善するためにITツールを導入する
・ルーティンワークは費用対効果が高ければアウトソーシングする
・社員のスキルアップを図るために勉強会や研修を開催する など

 こうした一つひとつの取り組みが社員の満足度を高め、やがてモチベーションアップにつながり生産性が向上する。短い労働時間でも成果を出して効率よく働ける環境が整うだろう。

進め方③実施した解決策を定期的に見直す

 解決策を実施して終わりではない。実施した解決策を定期的に見直し、より良い環境になるように改善することも重要である。良い結果をもたらしてくれる施策は継続させ、あまり効果のない施策は改善したり別の施策を取り入れたりする。こうしたPDCAサイクルを回していくと働き方改革をうまく推進していけるだろう。

管理職の負担を軽減させながら働き方改革を推進しよう

 労働者が満足しながら働いていける環境を整えるための働き方改革。しかし単に法律遵守しているだけでは全ての社員が満足する結果は得られないだろう。管理職である自らもいち社員であることを念頭に置き、速やかに業務効率化を図る必要がある。

 また働き方改革をスムーズに進めていくためには、その本質について管理職が理解しておかなければならない。本質的な働き方改革の進め方について、詳しく知りたい場合には下記の記事も併せて読んでほしい。

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