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その他ビジネス 2021.04.13

事業継承後、増収増益に必要な三つの資産

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 経営者の高齢化で問題となるのが事業承継だ。引退をしたいが、どう後継者に事業を引き継げばよいのか分からないというケースも多い。本記事では、事業承継の重要性から承継が進まない原因、スムーズな事業承継の方法まで解説する。

【画像】shutterstock

目次

 グローバリゼーションやIT技術の発展により、ビジネス環境は破壊的転換期を迎えている。さらに、新型コロナウィルスの感染拡大によって、見通しを立てるのは困難になった。このような状況下で、例えば5年後の業績を安心して予測できる経営者はいないだろう。だからといって、事業承継を後回しにすれば、問題は先送りになるだけであり、事態はさらに悪化してしまう可能性もある。

高齢化が進む日本において、事業承継は火急の課題

 事業承継とは、会社の経営を後継者に引き継ぐことを指す。具体的には、経営権や、株式、土地、工場、駐車場、設備、不動産などの事業用資産、従業員の技術、ノウハウ、取引先との人脈、顧客情報といった知的財産権を継承していく。また、資産だけでなく、負債や個人保証も引き継がれるため、負債額が大きいと事業承継先を見つけるのは困難になる。

事業承継の種類

 事業承継には、大きく三つの種類がある。それぞれ解説していく。
親族内承継
 経営者の親族に事業を承継する方法。承継先が身近な存在であり、人物の性格や資質も理解している場合が多いため、一般的には引き継ぎが容易。例えば、実子に継ぐことを早い段階で決めていれば、後継者の教育に十分な時間を割くことができ、スムーズな事業承継を実現できる。

従業員承継
 従業員に事業を承継する方法を指す。社内ルールや業務内容、商習慣を理解しているため、承継後も滞りなく事業を継続させることが可能となる。ただし、後継者が株式を全て買い取らなければならず、多額のコストを支払える財力が必要となる。また、個人債務保証を引き継ぐことができない難点も存在する。

M&A
 「Mergers and Acquisitions」の略で、第三者である会社に売却し、事業を承継する方法だ。雇用維持や資本力、ブランド力の向上といった利点があるほか、大きな売却益を得られる点も見逃せないポイントの一つだ。しかし、売却条件を満たす会社を見つけるのが困難なケースも多く、見つからなければ、もちろん事業は承継されない。

事業承継の必要性

【画像】shutterstock
 日本経済が発展を続けるためには、今ある企業を存続・成長させ、製品やサービスを次の世代に伝えていくことが必要不可欠だ。企業の廃業、倒産が相次げば、会社に雇用されていた従業員は失業し、行き場を失ってしまう。また、伝統産業や地場産業など、日本独自の製品、文化の継承が途絶えてしまうことも考えられる。

 現在、日本は少子高齢化という喫緊の課題を抱えている。国立社会保障・人口問題研究所の調査によれば、2030年には総人口の31.2%の3716万人が65歳以上になると推測されている。2015年の26.6%と比較しても、わずか15年の間に5%以上も増加していることが分かる。また、都道府県別で見ると、2030年には秋田県で43.0%、青森県で39.1%にのぼるなど、想像以上に事態は深刻だ。
 少子高齢化にともない、中小企業の経営者の平均年齢も徐々に上がってきている。帝国データバンクの調査では、2019年の社長の平均年齢は59.9歳と観測史上過去最高値となっている。規模別では、年商1億円未満の企業が平均61.1歳、構成比は70代が22.6%、80歳以上は5.4%を占めている。
 このように、少子高齢化が進む中で、中小企業の経営者の平均年齢も徐々に上がってきている。いずれ中小企業の経営者の大量引退が予想される中で、企業は事業承継に対してどのような認識を持っているのだろうか。帝国データバンクの調査よれば、「最優先の経営上の問題と認識している」と回答している割合が13.6%、「経営上の問題のひとつと認識している」と回答した割合は57.5%と、70%以上が事業承継を経営上の問題だと認識している。

後継者不足で、2025年までに累計650万人ほどの雇用と22兆円のGDPが失われる

 中小企業庁によれば、全国にある企業のうち、中小企業が占める割合は2006年時点で99.7%だ。つまり、中小企業のサービス・製品、雇用によって生活が成り立っているといっても過言ではない。
 また、同じく中小企業庁は「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」の中で、中小企業・小規模事業者の経営者のうち約半数の後継者が未定であると述べている。さらに、事業承継の課題を放置すると、2025年までに累計650万人ほどの雇用と22兆円のGDPが失われるという試算を発表し、危機感を募らせている。
このような背景から、中小企業庁では、承継時の相続税などの支払いをゼロにする「新事業承継税制」の創設や、後継者不在の中小企業や小規模事業者と、継業する意志のある企業のマッチング支援を行う「事業引継ぎ支援センター」を47都道府県に設置するなどのサポートを始めている。

進まない承継の準備

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 事業承継を経営課題として捉えている経営者が多い一方で、準備は進んでいないのが現状だ。全国商工会連合会が発表した「小規模事業者の事業活動の実態把握調査」によれば、事業承継の準備状況において、「十分にしている」「ある程度している」など、承継の準備ができていると回答した経営者は、全体の約半数に留まっている。

 なぜ、準備が進んでいないのだろうか。その原因としては、大きく以下の三つが挙げられる。

事業の将来性に不安がある

 グローバリゼーションやIT技術の発展により、ビジネス環境は破壊的転換期を迎えている。さらに、新型コロナウィルスの感染拡大によって、見通しを立てるのは困難になった。このような状況下で、例えば5年後の業績を安心して予測できる経営者はいないだろう。だからといって、事業承継を後回しにすれば、問題は先送りになるだけであり、事態はさらに悪化してしまう可能性もある。

事業承継の方法が分からない

 何を、どのように引き継げばよいのか分からない……といった理由で事業承継を後回しにしているケースもよく見受けられる。確かに、事業承継は会社を現経営者から次の世代へ引き継ぐもので、とても重い手続きとなる。また、会社の経営状況の把握、承継後には事業が拡大できるようにバックアップするなど、付随して多くの業務が発生し、そのプロセスは複雑だ。

事業承継に時間がかかる

 ひとくちに事業承継といっても、経営課題の把握、経営課題の改善、事業承継の方法の決定、後継者育成など、多くのステップを踏む必要があり、後継者探しが難航することも少なくない。事実、後継者の不在で、廃業する中小企業は後を絶たない。帝国データバンクの調査では、26万6000社の65.1%にあたる約17万社で後継者不在であることが明らかになっている。
 また、政策金融公庫の調査では、60歳以上の経営者のうち、50%が廃業を予定している。そのうちの29.0%が後継者不足を理由に挙げている。
 後継者が見つかったとしても、すぐに事業承継をできるわけではない。事業内容、経営課題、業務プロセスの理解、ステークホルダーの把握など、円滑に業務を進めるための育成期間が必要となる。

承継後も業績を伸ばし続けた企業の特徴からみる、引き継ぐべき三つの資産

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 事業承継が進まない状況に多くの経営者が直面している一方で、引き継ぎが完了しなければ企業経営が行き詰まる可能性もある。また、引き継ぎを成功させるためには、単なる事業の引き渡しではなく今後の企業の成長も見据えた事業承継が求められる。

 事業承継後、増収増益を果たした企業は何を引き継いだことで、業績を伸ばせたのだろうか。事業承継といえば、目に見える事業用資産や株式にフォーカスしがちだが、実は知的資産の引き継ぎが事業成長の鍵となる。

 知的資産には、人的資産、組織力、経営理念、顧客・取引先とのネットワーク、ノウハウ、特許権などさまざまな分野が存在する。その中でも特に重要なのが、売り上げに直結する「取引先との人脈」、「顧客情報」、ソリューションを提供する「従業員のスキル・ノウハウ」の三つだ。

 業務のノウハウやスキル、技術がシステムやデジタルで全社管理・共有されておらず、属人化しているという課題は多くの企業で散見される。企業が保有する顧客データの40%近くは、適切なデータ管理がなされていないために活用できる状態 にないという実態も報告されている。

 このような状況だと、万が一、事業承継のタイミングで中核人材が退職をしてしまった場合、会社の業績は大きく傾いてしまう。そのため、後継者が円滑に事業を経営できるよう、事業承継前に、スキルや技術、顧客情報の棚卸しをし、それをデジタルで一元管理するシステムの構築・導入を実施することが必要となる。

承継後も業績を伸ばす、事業承継

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 取引先との人脈、顧客情報、従業員のスキル・技術などの知的資産を引き継ぐだけでなく、事業承継した後も、後継者がこれらの資産を円滑に活用できる状態に整備する必要がある。

 では、どのような方法で引き継げば後継者が活用しやすいのだろうか。また、どのように情報を引き継げる状態にするか、ということを考えなければならない。実際に事業を承継された経験がある経営者に調査をし、承継後も業績を伸ばすためのノウハウをまとめたので、ぜひ、本記事の最後でダウンロードできる資料に目を通してみてほしい。

知的資産の承継でスムーズな事業承継を

 事業承継は経営課題の抽出、改善、後継者の選定、育成など、多くのプロセスがあり、長い時間を要する。経営者の引退が差し迫る前に、しかるべき準備をしておくことが肝心である。

 また、事業承継においては、目に見える株式、事業資産を重視しがちだ。しかし、後継者が持続的に事業を成長させていくためには、顧客情報や従業員の技術といった知的資産の承継が必要不可欠となる。ぜひ本記事を参考に、備えを盤石なものにしていただきたい。

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