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経営企画 公開日: 2022.04.06

健康経営の効果的な取り組み方法は? 具体策や導入方法を徹底解説

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 持続可能な企業として発展していくために必要不可欠な健康経営。難しそうに感じるかもしれないが、一つひとつをひもといていけばスムーズに進められるはずだ。本記事では健康経営の効果的な取り組み方法や、導入事例を徹底解説する。

【画像】Shutterstock

目次

健康経営とは?

 健康経営とは、社員の健康に配慮して、労働生産性を向上させることを目的とした戦略的な経営の考え方である。詳細は後述するが、主なメリットとして医療費の軽減やリスクマネジメントの実現、離職率の低下、企業・ブランドイメージの向上が挙げられる。
 社員の健康管理に投資すれば、結果的に企業イメージやブランドイメージ、売り上げなどの向上につながる。これは数ある企業のなかで将来生き残るための経営戦略の一つと言えるだろう。

 一方で健康経営と反対の意味をもつ不健康経営とは、人員不足などが原因で過酷な残業が続いたり休暇が取れなかったりと、社員の健康を害する可能性がある働き方をさせている経営の仕方だ。離職率が向上したり企業イメージや売り上げが低下したりする不健康経営は、企業の存続にかかわるような負のスパイラルを生み出す。

日本における健康経営推進

 多くの企業が健康経営に取り組めば日本全体の労働生産性も向上するため、政府も積極的に健康経営を促している。具体的な推進事例といえば、経済産業省と東京証券取引所が共同で選出している「健康経営銘柄」が有名だ。また、優れた健康経営に取り組んでいる企業への融資メニュー「DBJ健康経営格付融資」を提供する日本政府投資銀行の施策も知られている。

日本で健康経営が推進される背景

 日本で健康経営が推進される背景には、企業財政を圧迫するほど健康保険組合の赤字が目立ってきた事実がある。
健康保険の企業負担は想像以上に大きい
 企業を経営する際に加入する健康保険組合は、年々赤字が膨らんでいる。令和3年4月22日に発表された健康保険組合の予算早期集計結果によれば、令和3年度予算の経常赤字は5098億円にも上り、組合の約8割が赤字になっているのだ。
 健康保険組合の赤字はその組合に所属している企業が負担する決まりである。そのため各企業内で医療費の負担を減らすためにも、社員が健康的に過ごせるようサポートすべきである。一度誰かが不健康経営のせいで体調不良になれば、ほかの社員に業務のしわ寄せが行き多大なる負担がかかる。その結果、ほかの社員も体調を崩しかねない。

 こうした不健康経営のスパイラルにはまってしまえば健康保険組合の赤字はさらに増加する。各企業が自分で自分の首を絞めないように、健康経営に取り組み抜本的な改革をする必要がある。
健康への投資は3倍の投資効果がある
 ジョンソン・エンド・ジョンソンは世界中のグループ会社250社、約11万4000人を対象に健康教育プログラムを提供し、健康への投資に対するリターンを試算した。その結果、健康投資1ドルに対して3ドル分の投資リターンがあったとされている。

 具体的には医療スタッフなどの人件費やフィットネスルームなどの設備費、保健指導などの利用費に投資した結果、生産性・モチベーション・企業イメージの向上や医療コストの削減といったリターンを受けられた。加えて就職人気企業ランキングなどで順位が上昇したため採用が有利になったようだ。

健康経営に取り組むべき企業の特徴とは?

【画像】Shutterstock
 次に健康経営に今すぐ取り組むべき企業の特徴を四つ紹介しよう。

特徴①人員不足により労働時間が長くなっている

 慢性的な人員不足により社員の労働時間が長くなっている企業は、すぐにでも健康経営に取り組むべきだ。会社にいる時間が長くなれば、体調不良を感じていてもなかなか病院に行くこともできない。また長時間労働は肉体的だけではなく精神的にも疲労させてしまうため、メンタルヘルスにも良くないといえる。

特徴②ストレスチェックの結果が悪い

 ストレスチェックの結果が悪い企業も健康経営に取り組むべきだ。2015年から一定以上の規模の企業に義務化されたストレスチェックは、社員の健康を守る大切な施策の一つだろう。高いストレスを抱えている社員が多い場合には職場環境の改善が必要である。また部署や年代、役職ごとのストレスの値もチェックしておこう。

特徴③長期休職者が多い

 会社内で長期休職者が多い場合も健康経営に取り組むべきである。過酷な勤務状況が続けば何のために働いているのかわからなくなり、やがて心を病んでしまうこともあるだろう。特にうつ病などの精神疾患は自殺の引き金になりかねないため注意が必要だ。

特徴④中高年の社員が多い

 中高年は若年層に比べ、疲労やストレス、生活習慣の乱れなどが原因で癌や心筋梗塞、脳梗塞といった命を脅かす病気になる確率が高い。多くの経験値を積んで実力を付けてきた中高年が病気になってしまえば、会社を支えてくれる中堅社員が減ってしまう。そのため中高年の社員が多い企業も健康経営に積極的に取り組むべきだといえる。

健康経営のメリット

 続いては健康経営に取り組むメリットを三つ紹介しよう。

健康経営のメリット①労働生産性が向上する

 まずは健康経営の目的としても掲げられている「労働生産性の向上」だ。社員が身も心も健康的に働ければ、仕事中の集中力も上がり生産性が高まる。一人ひとりの生産性はそれほど高くなくても全社的に生産性が上がれば、それはやがて売り上げの向上といった大きなメリットにもつながるだろう。

健康経営のメリット②医療費を軽減し、リスクマネジメントも可能

 先にも述べた通り、健康経営に取り組むと社員が病気やけがをするリスクを低下させられるため医療費を大幅に軽減できる。

 また過剰な労働が原因で社員が亡くなってしまった場合、企業側に落ち度があれば損害賠償として多額の賠償金を支払わなければならない場合もある。それだけではなく、その社員の穴を埋めるために採用活動を始めるなど、さまざまな対応が必要となるだろう。健康経営に取り組むことでこうしたリスクマネジメントも可能だ。

健康経営のメリット③離職率が低下し、企業イメージの向上につながる

 社員が生き生きと健康的に働ける会社では、当然ながら離職率が低下する。会社に対する不満を感じることなく「もう働きたくない」と考える社員も減るからだ。加えて定着率も向上し、企業に対する社会的評価も良くなるだろう。その結果、企業イメージやブランドイメージの向上につなげられる。

健康経営の導入方法と具体策

【画像】Shutterstock
 では健康経営の導入方法と具体策についてみていく。これから導入を検討している人はぜひ参考にしてほしい。

経営理念・方針の位置付けをする

 まずは健康経営に取り組むことを社内外に発信する。しっかりと経営理念に組み込み明文化しよう。社外にはプレスリリースなどを活用して発表すると効果的だ。ただし、単に健康経営に取り組む旨を発信するだけではなく、具体的な取り組み内容についても決めておかなければならない。

 また加入している健康保険組合では「健康経営事業所の募集」をしている場合があるため、確認して「健康経営宣言」をさせてもらうのもよい。
健康経営宣言
 健康経営宣言とは、企業が社員の予防・健康づくりに取り組むと表明するものである。対外的に健康経営の取り組みを発信する意味を持つだけでなく、健康経営優良法人として認定されるために必要な条件の一つでもある。健康経営優良法人として認定されれば企業イメージが向上して人材が確保しやすくなるだけでなく、金利・融資の優遇措置や助成金を受けられるなどのメリットもある。

組織の体制づくりをする

 次に社内で健康経営に取り組める体制づくりが重要だ。例えば人事部に健康経営担当者を立てたり、専門的に部署を立ち上げたり、外部の健康経営アドバイザーなどと契約したりと行動していこう。担当者に健康経営の知識がない場合には社内研修を行うとよい。

社員の健康状態を把握し、施策を実行する

 担当者や部署が決まったら、いよいよ社員の健康を管理していく。そのためにはまず社員に健康診断やストレスチェックを受けさせよう。これまでの受診率や結果などもチェックしながら、健康上で問題を抱えている社員を把握する。分析した結果に基づき、残業時間が多すぎないか、有給休暇は取れているかなどの現状を把握し改善点を見つけ出そう。

 こうした小さなことから始める健康経営だが、一巡して終わりではない。取り組みの実施状況や社員などによって課題点は変化していく。健康経営を成功させるためには定期的な取り組みの見直しや改善が鍵といえる。

健康経営に取り組む際のポイント・注意点

 ここで健康経営に取り組むときのポイントや注意点を三つ説明する。

ポイント・注意点①健康に対する意識を浸透させていく

 健康経営を失敗させないためには、年齢は関係なく全ての社員の健康に関する意識改革をしなければならない。社員本人が「健康に働きたい」と思っていなければ、いくら会社側で健康を促しても意欲的に行動してもらえないからだ。

 健康への意識を浸透させる効果的な方法は、社内で影響力がある人に協力してもらいセミナーや講義に参加するように促すことだ。影響力がある人から声をかけてもらえれば、やる気がない社員なども行動してくれるようになるだろう。

ポイント・注意点②経営層が理解し積極的に行動することが求められる

 健康経営は経営層が深く理解し率先して行動しなければ広く浸透しないだろう。経営層の認識が甘く、予算削減のためにせっかく立ち上げた健康経営を担当する部署が廃止されてしまうなどといった事態に陥れば、元も子もない。

 そうならないために健康経営に取り組む目的やメリットを理解して、「何としてでも成功させる」と、経営層が強い意志を持つことが重要だ。多くの企業はトップダウンであるため、経営層からの適切な指示があれば、社員の行動も伴ってくるだろう。

ポイント・注意点③中長期的な取り組みだと理解する

 健康経営は中長期的な取り組みであることを理解しておこう。いざ健康経営に踏み込んでも、「早く結果を出さなければ」と焦ってしまえば取り組みを強引に進めかねない。そもそも最初から健康な人はその状態を維持すればよいが、元々何らかの病気を抱えている人の回復には時間がかかることもある。

 強引に進めれば社員の精神的ストレスになったりハラスメント案件に該当したりと、健康経営とは真逆の結果を生みかねないため注意が必要である。

健康経営に取り組んでいる企業の事例

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 最後に健康経営に取り組んでいる企業の事例を三つ紹介しよう。

事例①株式会社ローソン

 ローソンでは健診チェックや生活習慣チェックなど健康増進に向けたタスクを実行する度に、「ローソンヘルスケアポイント」が付与されるプログラムを実施している。またプロジェクトチームで歩数を競い合ったり、全社員が参加できる「スポーツ大会」を実施したりとコミュニケーションの活性化も積極的に行っている。

 こうした取り組みの結果、健康診断受診率100%を達成したり疾病による休職者率が0.2%から0.12%に改善されたりした。健康経営を成功させているローソンでは、健康診断を受診しなかった本人とその上司のボーナスをカットするなどして、社員が意欲的に行動するように促している。

事例②味の素株式会社

 味の素では全社員を対象とした個別面談や専門医と連携した個別指導、休職から復帰した社員に再就業後プログラムを実施するなどの取り組みを行っている。また個別面談では表れにくいメンタルヘルスの不調に対しても保健指導を徹底。

 そのおかげで2014年からの3年間で、うつ病だった社員の再休職率が7%から4%に減少した。また自社独自のノウハウである「睡眠改善プログラムwithグリナ (R)」を実施後、約78%の社員が「睡眠改善につながった」と回答した。

事例③バンドー化学株式会社

 バンドー化学株式会社では、EQ(Emotional Quotient):情動指数を活用した糖尿病重症化予防プログラムを実施して生活習慣の改善を促している。また歯科健診などを積極的に推進し、歯科医療費の削減も図っている。加えて上司とのコミュニケーション時間を確保し職場の活性化を図ることで、社員がメンタルヘルスの不調で療養する日数が前年度比マイナス22%となった。

 他にも週1回のノー残業デーには、社長や担当役員自らが事業所を回り定時退社を促すなど積極的に健康経営に取り組んでいる。

 根本的に残業時間を軽減させる施策や考え方については、下記の資料で理解を深められる。この正しい働き方改革について語っているのは、新・ダイバーシティ経営企業100選運営委員会で委員長も務める、中央大学大学院戦略経営研究科教授の佐藤博樹さんだ。健康経営を成功させるためにもぜひチェックしてほしい。

健康経営に取り組み、持続可能な企業を目指そう

 健康経営は一見難しそうに感じるかもしれないが、目的や考え方を理解して真剣に取り組めばそれほど難しくはない。ポイントを抑えながら着実に健康経営に取り組んでいけば、これから先も持続可能な企業として生き残れるだろう。

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