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経営企画 公開日: 2022.09.06

【2023年導入】インボイス制度導入による個人事業主への影響と対策方法を解説

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 2023年10月1日より施行されることになっているインボイス制度。個人事業主・フリーランスに多大な影響を与える制度であるものの、いまだその内容を理解している方は少ないのではないか。そこで本記事では、インボイス制度の概要について説明したい。

【画像】Shutterstock

目次

インボイス制度とは何か?

 インボイス制度とは、請求書に関する新しい制度だ。新制度の正式名称「適格請求書等保存方式」にあるように、「適格請求書」と呼ばれる新形式の請求書が導入されることになった。インボイス、つまり「適格請求書」とは何なのか、制度のポイントはどこにあるのか、解説したい。

インボイス(適格請求書)とは?

 インボイス(適格請求書)とは、これまでの請求書に必要だった記載事項に、さらに追加して記載しなければならない項目が増えた新しい様式の請求書のことを指す。これまでの請求書には以下の項目の記載が必要であった。

・発行者の氏名又は名称
・取引年月日
・取引内容
・受領者の氏名又は名称
・軽減税率の対象である旨の表記
・適用税率ごとに区分した合計額

 新しいインボイス(適格請求書)では、さらに以下の3つの項目の記載が必要になる。

・インボイス制度の登録番号
・適用税率
・適用税率ごとの消費税額の合計

インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは?

 インボイス制度(適格請求書保存方式)は事業者の仕入れ税額控除の要件を再定義するために2023年10月1日から導入される。  仕入れ税額控除を適用したい事業者は、これまでの様式の請求書ではなく、所定の記載要件を満たしたインボイス  (適格請求書)を保存しなければならない。それが多くの個人事業主に影響を与えることについては後述したい。

インボイス制度の背景と目的

 なぜインボイス制度が導入されることになったのか、その背景について解説する。

取引の透明性確保

 インボイス制度を導入する目的の1つは、取引の透明性を確保することにある。2019年の消費税率引き上げに伴い、一部の商品では消費税率が8%の商品と10%の商品が混在している。なので、正確に税額を把握するには、どの商品にどちらの税率が適用されているかを区分する必要があるので導入に至った。また、税額を明確にすることにより、仕入れと販売 における不正とミスを防止する狙いもある。  

益税の消滅

 益税とは、買い手が事業者に支払った消費税の一部が、納税されずに売った側の利益になることをさす。例えば、これまで売上が1,000万円以下の事業者については、消費税を納める必要がなかった。しかし、消費税10%分を買い手に請求することはできるため、それが益税となっていたのだ。  

 インボイス制度の導入によって、インボイスを保存しなければ事業者は仕入税額控除ができなくなった。ところが、インボイスを発行できるのは、消費税10%を課税し、実際に納税する事業者だけだ。つまり、売上1,000万円以下の免税事業者であっても、消費税10%分を収める事業者でなければインボイスを発行することができない。

 インボイスを保存できなければ、買い手側は商品購入の際に仕入税額控除ができないため、消費税を納めず、インボイスを発行しない事業者の商品購入を躊躇するようになるだろうと言われている。

 売上1,000万円以下の事業者は以下の二択を迫られているということになる。

・インボイス制度に登録してインボイスを発行し、これまで通りに商品を販売しやすくする代わりに消費税10%を納める(益税の消滅)
・インボイス制度に登録せずに益税10%分をもらい続ける代わりに、仕入税額控除の対象とならない請求書を発行し、購入されづらい状況を甘んじて受け入れる

インボイス制度はいつから導入される?

 インボイス制度は2023年10月1日に施行される。2023年10月1日に課税事業者としてスタートするためには、2023年3月31日までに「適格請求書発行事業者」として登録申請をしなければならないので注意が必要だ。

インボイス制度の対象者とは?

【画像】Shutterstock
 インボイス制度の対象者について解説したい。

消費税の課税事業者

 インボイス制度は、インボイスを発行する消費税の課税事業者が対象となる。従来、売上1,000万円以下の事業者は消費税の課税事業者から免れていたが、インボイスを発行するためには課税事業者として登録し、消費税10%分を納めなければならなくなった。インボイスが発行できなければ、仕入税額控除の対象となる請求書が発行できず、事業者からの受注機会が減少する可能性が高いからだ。  

課税事業者と免税事業者の違いとは?

 消費税の課税事業者と免税事業者の違いについて解説したい。従来までは、売上1,000万円以下の事業者はもれなく消費税の免税事業者であった。しかし、インボイス制度の導入によって、消費税1,000万円以下でも、消費税を課税される課税事業者になる選択肢が出てきたのだ。課税事業者になれば、仕入税額控除が使えるため仕事の受注が増えるだろう。  免税事業者のままでいると、仕入税額控除が使えないため、消費税が二重三重にかかって割高となってしまう。仕入税額控除の詳細については後ほど触れる。

インボイス制度で変わることとは?

 インボイス制度導入で今までの制度と変わる点について解説する。

消費税免税事業者がほぼいなくなる

 免税事業者のほとんどは、インボイス制度の導入によって消費税課税事業者への変更を余儀なくされるだろう。  消費税を納税しない売上1,000万円以下の事業者は仕事を受注しにくくなる環境を作ることで、なるべく多くの事業者  に消費税10%を納税させようとしているのだ。
 
 特に、特定の企業や団体、組織に専従しておらず、業務委託を主としている  フリーランス事業者には影響が大きいはずだ。インボイス制度に登録しないフリーランスは、受注の機会が大いに減ることは必至である。仕入税額控除のメリットを享受できない、インボイス制度に未登録のフリーランスにわざわざ発注しようと思う事業者は少ないはずだからだ。

仕入税額控除とは?

 仕入税額控除とは、仕入れの際に課税されて支払った消費税金額を、販売した売上の消費税金額から差し引くことができる制度のこと。例えば、ある事業者が売上55,000円を売り上げ、仕入れで11,000円支払ったとする。この場合、売上にかかった5,000円の消費税を仕入れの際に支払った1,000円の消費税で差し引き、合計4,000円の消費税を事業者は納税することになる。

 仕入税額控除を使えれば、事業者が納税しなければならない消費税額は減る。インボイスを保存できないフリーランスなどに発注する場合、その消費税分が控除されず、事業者側の負担になってしまう。

これまでの請求書と記載内容が変わる

 上述したように、インボイスには従来の請求書では記載の必要がなかった項目が、新たに記載要件として加わった。「インボイス制度の登録番号」、「適用税率」、「適用税率ごとの消費税額の合計」の3つの項目である。従来の請求書の項目に加えこれらの項目を記載しなければ、インボイスとしては認められない。

仕入れを行う事業者側も対応を迫られる

 当然ながら、フリーランスや卸売り業者などから商品・サービスを仕入れる事業者側もインボイス制度への対応を迫られる。インボイス制度導入後は  従来とは違う様式の請求書を扱うことになるので、これまでの請求書管理の方法から変更しなければならないだろう。

 また、制度発足当初はインボイス制度に登録している事業者と、そうでない事業者との見極めを、見積もり段階でしなければならないはずだ。インボイス制度に登録していない事業者であっても発注するのか、あらかじめ判断基準を作っておく必要もある。業務プロセスは複雑にならざるを得ないだろう。

インボイス制度による個人事業主への影響とは?

【画像】Shutterstock
 インボイス制度の導入で個人事業主は大きな影響を受ける。具体的にどのような影響が出るのか解説したい。

インボイス制度に登録するかどうか判断を迫られる

 インボイス制度が導入されることで、全ての個人事業主がインボイス制度への登録をするかどうか、判断を迫られる。売上が1,000万円以下の個人事業主はインボイス制度に登録しない選択肢も取れるが、あまり得策とは言えないだろう。実質的には、半強制的にインボイス制度への登録を迫られることになる。

免税事業者は受注・販売機会が減る

 インボイス制度導入によって、インボイスを発行できない消費税免税事業者については、自らの商品・サービスを購入してもらえる可能性が低下するだろう。

 例えば、フリーランスでWebデザイナーをしているAさんとBさんの例で考えてみたい。Webデザインの料金は二人とも同じで20万円だとしよう。消費税は2万円である。しかし、Aさんは免税事業者で、Bさんは課税事業者でインボイスを発行できる。二人のWebデザインの品質が全く同じだとすれば、事業者側は当然Bさんに発行するはずだ。インボイスを発行できるBさんからインボイスをもらって保存することで、消費税2万円分を仕入税額控除として使えるからである。

 上述したような単純な例はあまり現実には発生しないだろうが、免税事業者が不利になるのは確実だ。

課税事業者は有利になる

 売上が1,000万円を超えている事業者はこれまで通りに事業を進めていても有利になる場面が増えてくるだろう。インボイス制度に登録していない売上1,000万円未満の事業者よりも、インボイス制度に登録済みの売上1,000万円事業者に発注したほうが、事業者側としては信用できる上に税制上も得をするためだ。売上1,000万円未満であっても、インボイス制度へ登録している事業者は同じく有利になる。

インボイス制度導入に向けて個人事業主ができる対策とは?

 インボイス制度導入に向けて個人事業主ができる対策を解説する。

インボイス制度に登録する

 個人事業主は、インボイス制度が施行する2023年10月1日に向けて、2023年3月31日までにインボイス制度に登録しておくのが無難だろう。登録をしておかないと、新規顧客の獲得はもちろん、既存の顧客との取引も続かなくなってしまう場合もある。個人事業主であってもインボイス制度に登録してしまうことが、これからの変化に向けての一番の対策となる。  

会計ソフトを使う

 多くの会計ソフトサービスでは、インボイス制度に対応したインボイスを発行できるようにテンプレートの準備が進んでいる。インボイス制度導入に向けた新しいフォーマットに直ちに対応するのは難しいので、会計ソフトを使うのがよいだろう。  

節税の勉強をしておく

 節税についても勉強しておきたいところだ。消費税10%分を納税しなければならないとなると、売上1,000万円以下の事業者の場合、これまで以上に手取りが少なくなる。手元のお金を増やせるよう、節税について勉強し、実践してみることをおすすめしたい。

インボイス制度に対応した請求書管理

 以上、インボイス制度について解説した。インボイス制度の導入によって、売上1,000万円以下の個人事業主はインボイス制度への登録が迫られる。インボイスを発行できなければ、事業者側が仕入税額控除を使えないため、受注のチャンスを大きく減らすことになるだろう。事実上、インボイス制度への登録は必須と言っていい。2023年3月31日までに登録し、2023年10月1日からすぐにインボイスを発行できるようにしておきたいところである。

 これからの請求書は、従来通りの請求書とインボイスの二つに分かれることになる。受領の際に整理するのも一苦労だ。そこでBill Oneをおすすめしたい。インボイス制度に対応した請求書管理が可能になる。気になる方はぜひ資料をダウンロードしてみていただきたい。

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