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経営企画 公開日: 2021.06.16

進まないDX、原因は経営者・現場社員間にある溝

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 DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する企業が増えている中、その成果をあまり感じられていないケースも多い。本記事では、DX推進が行き詰まる要因となり得る組織構造の注意点を解説する。

【画像】shutterstock

目次

デジタルトランスフォーメーションの取り組みは進む

 新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、DXを経営計画に入れ、推進する動きが活発化している。2020年12月に発表された電通デジタルの調査では日本企業の74%がDXの推進に着手しており、新型コロナウイルスの影響で導入が加速したと答えた企業は50%に上った。
 DXとは、デジタル技術を用いることで市場環境の激変に耐えうるようにビジネスモデルの変革を行うこと。経済産業省はDXを以下のように定義している。
DXとは
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
 従来のIT化の概念と似ているが、IT化が既存の業務の効率化やデジタルツールの導入のみを対象にした概念であるのに対し、DXは変革が主体であるのが特徴である。あくまでも「デジタルによるトランスフォーメーション」なのだ。

 先述の電通デジタルの調査によると、DXの取り組み内容として、新型コロナウイルスの流行後に取り組みが加速したという回答が多い領域は、「DXによる業務の効率化・生産性の向上の取り組み」が46%で最も多いという結果だった。2番目に多いのは「短期的な既存事業・サービスに対するDXの取り組み」で38%でああった。

 このデータからは、取り組みが加速したといっても、まだDXの入り口に足を踏み入れた段階の企業が多いことが分かる。DXの本来の価値は中長期的なビジネスモデルの変革にあるが、多くの企業が既存の業務の効率化や短期的な取り組みの段階にあることがうかがえる。

多くの企業が、手詰りの状態

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 さらに同調査によると、DXに取り組んでいる企業の中で「非常に成果が出ている」「ある程度の成果が出ている」と答えたのは合わせて20%という結果である。「取り組んだ一部に成果が出ている」と合わせても50%に満たない。言い換えればDXを推進した企業の半分はほとんど手応えを感じていないことになる。考えられる理由を以下に三つ紹介する。

 まずは「マネジメント層がDXの本質を理解できていないケース」である。DXは単なる部分的な業務の効率化ではなく全社的なビジネスモデルのトランスフォーメーション(変革)が主体となる。市場環境の変化に対して強いビジネスモデルに変えていくのがDXである。

 ところが、単なる自動化や効率化を目的にDXを推進しようとする人が多く、デジタルツールによってどれだけのコストが削減できるかを重視している経営者もいる。そのような場合、DXの成果を感じづらくなるだろう。

 また、DXに詳しい社内の人材が不足していることも失敗の要因となり得る。DXの専門家を社内に配置している企業はほとんど無い。多くの企業にとって、DXは今までに取り組んだことがない未知の領域なのだ。自社で人材が確保できれば良いが、労働市場にもDXの専門家は少ない。そのため外部の業者に委託するか、DXを包括的にサポートしてくれるサービスを選ぶ必要があるだろう。

 最後に、DX推進失敗の大きな原因の一つとして考えられるのがマネジメント層と現場の溝である。これについては次のセクションで詳しく解説する。

DX推進を阻害する原因の一つはマネジメント層と現場の溝

【画像】shutterstock
 DX推進の取り組みを阻害する要因の一つとして、マネジメント層と現場の溝が挙げられる。会社の経営活動をピラミッドで表したとき、上位のレイヤーには社が描くビジョンがある。そしてそのビジョンを実現するために事業があり、事業を推進していくために現場がある。立ち上げたばかりの企業や小さな企業であれば人員が少ないのでビジョンは全社的に共有しやすい。

 しかしながら、古くから存在している企業や大規模な企業においてはマネジメント層と現場との溝は深くなりやすい。なぜなら現場の従業員一人ひとりの業務が高度に細分化され、マネジメント層の掲げた巨大なビジョンと自らの仕事のつながりを感じにくいからである。その事例として、フィンランドの教育学者で近年は組織論研究を展開しているユーリア・エンゲストロームたちの研究を紹介する。

 2006年ごろ、ある病院では臨床現場の医師や看護師たちの業務負荷が増大し、患者に十分な医療サービスを提供できない状態になっていた。

 そこで病院のマネジメント層はBPRによる業務改革を推進した。BPRとはビジネス・プロセス・リエンジニアリングの略で、既存の業務プロセスを再構築して効率化を促す業務改革のこと。その結果、手術ごとに最大28分の無駄な時間が削減されるなど一定の成果を得られた。

 しかし、この改革は結果的には定着せず、元のプロセスに戻ってしまったという。なぜなら、28分の短縮のために上からプロセス変更を押しつけられることに現場のスタッフたちが意味を見いだせなかったからである。

 病院に限らず一般企業でも同じだが、現場にとって慣れない業務プロセスへの変更はストレスとなる。現場にとってもメリットがある改革であることをしっかり理解してもらわないと改革を受け入れてくれないのだ。結局この病院は、現場スタッフたちが自ら効率化のやり方を話し合い、それを上から示されたプロセスとすりあわせることで改革が定着したという。

 この病院の例はマネジメント層と現場の溝の例だが、現場の別部門同士の連携が上手くいかず、DX推進を阻害してしまうこともある。特にデジタルに精通している部門が複数ある企業の場合は注意が必要である。例えば、自社の商品としてウェブサービスを開発・運営している部門と、別に社内の情報システム部門があるような企業は、DX推進の主導権をどちらが握るかで揉めやすい。
【画像】shutterstock
 このような状況になると二つの部門の利害の調整によって方針が決まってしまう弊害が生まれる。本来はマネジメント層が掲げた理想的なビジョンに基づいて推進しなければいけないのだが、現場では2部門が納得できる着地点はどこかという観点で物事が進んでしまう。

 これはGAFAのようなDXが進んでいる巨大IT企業においても例外ではない。彼らも部門間に溝が生まれないように腐心している。

 Appleは2017年に新しい本社の社屋をオープンした。キャンパス2と呼ばれるドーナツ型の建物である。建物の反対側に行くのにドーナツ部分をぐるりと一周しなければいけないため仕事をするには非効率な形に思える。しかしながら、この特徴的な建物が部門間の溝を防いでいるという。

 なぜなら社屋内の長い距離を歩いている過程で他部門のさまざまな人を目にし、すれ違うからである。そこでの挨拶や軽い会話をすることで他部門への興味関心を喚起し、新しいビジネスの話などを行う場を醸成しているのだ。

 この施策はデジタルとは異なるアナログな施策だが、何らかの方法で部門間の溝を解消しなければDXの推進は進みにくいのである。

 一般的にこのような部門間の溝が生じると以下のような弊害が生まれる。
  • 従業員一人ひとりの業務が細分化・専門化され、自分の業務以外のことに目を向けられなくなる
  • 外部のビジネス環境の変化よりも自分の職場のルールを優先するようになる
  • 部分最適ばかり考える傾向が増え、会社全体のことをあまり考えなくなる
  • 組織が硬直化し、変化に弱くなる
 上記のような傾向にある組織とDX推進は非常に相性が悪い。なぜならDXは変革を目指すものだからである。マネジメント層と現場の溝や部門間の溝に経営者が気付かないままDXを推進しても、現場の従業員たちが業務プロセスの変更や新しいデジタルツールの導入を受け入れることができず、頓挫してしまうのだ。

 ではどのようにしてマネジメント層のビジョンや目的意識を現場と共有すれば良いのだろうか。

溝を埋めるためにマネジメント層が取るべきDX推進のアプローチ

 DX推進にはマネジメント層と現場がビジョンと目的を共有し、現場にも意義があるものだと感じてもらう必要がある。そのためにはマネジメント層と現場のコミュニケーションを密に取ることが重要である。

 法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」を提供しているSansan株式会社もDXを推進する際にマネジメント層と現場あるいは部門間で溝が生じた会社の一つである。しかしながらSansan株式会社は独自の施策によって上下間や部門間の溝を埋め、今日までDXを推進してきた。Sansan株式会社がどのような施策によって溝を埋めてきたかは、以下の資料で詳しく解説している。

社内の溝を埋め、最大限の効果が出るDXを推進しよう

 当記事ではDX推進が進まない原因についてまとめた。DXの推進を阻害する主な要因として、マネジメント層と現場の間に生じた溝が挙げられる。マネジメント層と現場でビジョンや目的が共有されていないと現場がDX推進のための取り組みを受け入れてくれないのだ。この溝を埋めるためには上下間や部門間でのコミュニケーションを密に取ることが重要である。

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