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経営企画 公開日: 2021.12.15

ウェルビーイング経営とは? 健康経営との違いや取り組み事例を紹介

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 心と体の健康だけではなく、社会的にも満たされた状態を示す「ウェルビーイング」。最近よく聞かれるウェルビーイング経営は、離職率の低下や生産性向上といったメリットを企業にもたらす。本記事ではウェルビーイング経営について詳しく解説する。

【画像】Shutterstock

目次

ウェルビーイング経営とは?

 ウェルビーイング経営とは、社員をはじめ消費者や株主、仕入れ先などの全てのステークホルダーがウェルビーイングな状態の経営だ。

 そもそもウェルビーイングとは、心や身体が健康で、社会的にも満たされた幸福な状態を示す言葉である。ここで言う「健康」とは、日本WHO協会によれば次のように定義されている。
健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、全てが満たされた状態にあること
 つまりウェルビーイング経営とは、全てのステークホルダーが心や体だけではなく、社会的にも幸福である状態になっている企業経営だ。「ウェルビーイング」の詳細については、以下の記事を併せて読んでほしい。

健康経営との違い

 「健康経営」とは、社員の健康増進を目的としている経営方法だ。長時間勤務による過労死などの労働災害が取り沙汰されたタイミングで、社員が健康で安全に働いていける環境を整えるために健康経営が重要視されはじめた。

 健康経営は主に身体的な健康に重きを置いているが、ウェルビーイング経営は身体だけではなく、社員の精神的、社会的にも満たされた状態に注目している。

ウェルビーイング経営のメリット

【画像】Shutterstock
 幸福度の高いウェルビーイング経営を取り入れた場合のメリットは、主に次の四つである。

メリット①医療費の削減

 ウェルビーイング経営は医療費の削減ができる。全てのステークホルダーの幸福度を高めて健康な暮らしを守るため、病気になりにくいといえるだろう。

 健康な状態で生活していれば、病院に受診することも減るため医療費の削減へとつながる。厚生労働省の調査によると、令和2年度における日本の医療費は42.2兆円だ。
 日本の医療費がこれほどまでに膨れ上がっているのは、一概に不健康な人が多いというわけではない。近年の日本では高齢化社会が課題となっており、高齢者が多い国では必然的に医療費も高くなる。

 しかしウェルビーイング経営を徹底していけば、加齢による病院受診は避けられないにしても、ビジネスパーソンの労働災害による医療費は削減していけるだろう。

メリット②離職率の低下

 心身ともに健康で働けるウェルビーイング経営の下なら、退職したいと考える社員も減少するため離職率の低下につながるだろう。リクナビNEXTが行ったアンケート調査によると、退職する理由TOP3は次の通りだ。
・1位:上司、経営者の仕事の仕方が気に入らなかった
・2位:労働時間、環境が不満だった
・3位:同僚、先輩、後輩とうまくいかなかった
 最も多い離職理由が「上司や経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」である。次いで「労働時間や環境が不満だった」、3位以降も人間関係や職場環境が理由となっている。ウェルビーイング経営を行う上で、人間関係や労働時間、給与といった労働環境を改善することも企業が取り組まなければならない問題だ。

 ウェルビーイング経営を行うことで、社員の心身の健康を維持しながら社会的にも満たされるため、会社に対して不満を感じる人が少なくなるだろう。

メリット③生産性の向上

 ウェルビーイング経営に取り組むと、社員の生産性向上が見込める点もメリットだ。身体も健康で社会的にも満たされていれば、仕事に対するやる気も高まる。

 社員一人ひとりの生産性が上がることで、組織としての生産能率も向上する。そうなれば企業価値向上を期待できるかもしれない。

メリット④社員のモチベーションが高まる

 社員のモチベーションが高まる点もウェルビーイング経営のメリットである。なぜなら幸福度の高い働き方によって、人生の意味や意義を見出せるようになり高いモチベーションが維持されるからだ。

 ビジネスを進めていく中で、上手くいかないことも当然あるだろう。しかし高いモチベーションによって壁を乗り越えられれば、それはまた精神的にも満たされ、ウェルビーイングな状態となる。

ウェルビーイング経営の取り組み事例

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 それでは実際にウェルビーイング経営を行っている企業事例について紹介しよう。

セルフケアをサポートする味の素の事例

 味の素では、社員一人ひとりにおいて心身の健康を保つために、セルフケアの取り組みを実施している。新入社員や中堅社員、管理職などでそれぞれ立場が違うため、感じていることやストレスの大きさなどが異なる。そこで産業医による階層別研修を設けている。

 他にもささいな不調発見につながる全員面談や、社員の精神面を強化するためのメンタルヘルス回復プログラムなども特徴的だ。こうした取り組みの結果、経済産業省と東京証券取引所が選出する「健康経営銘柄2017」にも選ばれている。

社員同士のつながりを深める楽天の事例

 楽天では、社員同士でお互いにウェルビーイングな状態に配慮する「コレクティブ・ウェルビーイング」といった取り組みを実施している。新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に個人で働き方や人とのつながり方を考えなければならなくなった中で、一人ひとりのウェルビーイングな生活を組織的に叶えていこうとするのが狙いである。

 具体的には、柔軟な働き方を取り入れることに加え、経営陣が社員と接する機会を増やしたりオンラインでのコミュニティ活動で社員同士のつながりを作ったりしている。その結果、心身の健康を増進するだけでなくチームワークも強化され、社会的にも満たされた状態で働くことが可能になっているといえる。

独自の強化領域を定めるPwCの事例

 PwCは、成功する組織や人々はウェルビーイングを尊重する姿勢があるという価値観のもと、Physical、Mental、Emotional、Spritualという四つの側面からグループ全体でウェルビーイングを追求している。

 先の四つの領域についてはピラミッド構造になっており、具体的には土台となるPhysicalは身体面について快調であるか、Physical の上に立つMentalは仕事に優先順位をつけて集中して取り組めているかを意味している。さらに、Mentalの上位にあるEmotionalは一人ひとりが持つ物の見方が、物事を理解したり感受したりする際にどう機能しているか、最上位にあるSpritualは各人の人生における目的や大事な価値観が今の生き方・働き方で実現できているかを表している。PwCでは、四つの領域から社員がウェルビーイングを追求していくために、マッサージルームの設置など健康的な生活を支援する「健康維持・増進活動の推進」、カウンセリングサービスといったメンタルケアを行う「メンタルヘルス対策の推進」、リモートワークやテクノロジー活用などによって柔軟な働き方を実現する「長時間労働対策の推進」を強化領域として掲げている。

ウェルビーイング経営の考え方

 ウェルビーイング経営を実施する場合に参考になる考え方を、二つ紹介しよう。

考え方①PERMAモデル

 ウェルビーイング経営をするに当たって、まずは社員の幸福な状態について考えなければならない。そこでウェルビーイングの多面的なモデルである「PERMAモデル」を用いて考えてみよう。

 PERMAモデルとは、ポジティブ心理学の父とも呼ばれるセリグマン博士が2011年に提唱したウェルビーイングの考え方だ。PERMAモデルによると、下記五つの領域を満たすと人は持続的な幸福を感じられる。
・Positive emotion→ポジティブな感情
・Engagement→物事への積極的な関わり、思い入れ、結びつき
・Relationship→他者との良好な関係、肯定的な関係性
・Meaning→人生の意味や意義の自覚
・Accomplishment→達成感
 ポジティブな感情とは、うれしい・楽しい・面白い・感激・感動・感謝・希望などが挙げられる。社員は心身ともに健康であることに、こうしたポジティブな感情を感じるのではないだろうか。

 物事への積極的な関わりでは組織の一員であることの意識、他者との良好関係では円滑な人間関係が重要だ。さらに人生の意味や意義を自覚させるには、社員のモチベーションを高めたり目標を設定したりすることが必要である。

 このようにPERMAモデルを活用して、社員の幸福度を高めていくと組織全体がウェルビーイングな状態となると考えられている。

考え方②米ギャラップ社が唱える五つの要素

 ウェルビーイングのもう一つの考え方として、アメリカのコンサルティング会社であるギャラップ社が唱える五つの要素がある。
・仕事の幸福 (Career Wellbeing)
・人間関係の幸福(Social Wellbeing)
・経済的な幸福(Financial Wellbeing)
・身体的な幸福(Physical Wellbeing)
・地域社会の幸福(Community Wellbeing)
 仕事があることへの安心感やモチベーションは、仕事の幸福を満たす。良好な人間関係があれば、ストレスが減り幸福度は上昇する。経済的な幸福とは、生活に必要なお金だけではなく、自ら何かに挑戦するときにそれができる金銭的余裕を示す。

 また心身ともに健康で仕事やプライベートに対してエネルギッシュに取り組めていれば、身体的な幸福を感じられるだろう。そして帰属している組織や地域と良い関係を築けていると、地域社会の幸福を感じる。

 こうした五つの要素に企業ができる施策を当てはめて実施すれば、社員の仕事やプライベートが充実する。これがウェルビーイング経営を推進するにあたってのキーポイントとなるのだ。

ウェルビーイング経営を実現させるには

【画像】Shutterstock
 ウェルビーイング経営を実現させるためには、具体的に次のような施策を検討してみよう。

方法①メンタルヘルスケアや労働環境の改善

 まずは社員のメンタルヘルスケアや、労働環境の改善に取り組んでみよう。具体的には過度なストレスを与えないように長時間労働を減らしたり、休暇申請のしやすい風土づくりをしたりと対策を立てる。また産業医による個人面談を定期的に実施するのも良いだろう。

 社員の精神的・身体的なストレスが緩和されれば、先のPERMAモデルでいうポジティブな感情が満たされる。また仕事に対して楽しさを見出せれば、やがてそれはモチベーションにつながり、仕事の幸福を感じられるだろう。

方法②円滑な人間関係を築くためにコミュニケーションツールを活用

 正社員などのフルタイム労働の場合、1日のうち3分の1以上の時間を過ごす職場で良好な人間関係を築くことは非常に重要だ。少しでも人間関係に関する悩みがあれば、仕事のパフォーマンスも低下してストレスを抱える。

 そこで社員同士が気軽にコミュニケーションを取れるようなビジネスチャットツールや、社員専用のSNSなどを導入してみてはどうだろうか。コミュニケーションの機会創出につながり、社内全体の風通しを改善できるかもしれない。

方法③組織全体の生産性を向上させるSaaSの導入

 労働環境をより良くするため、SaaSシステムを導入するのも一つの手段だ。導入したシステムによって組織全体の生産性が向上すれば、そこで働く社員にも余裕が生まれる。さらに効率よく経営していければ、売り上げの向上にもつながるだろう。

 SaaSには多岐に渡る種類がある。例えば、社員や取引先とのやり取りを円滑にするコミュニケーションツールや業務にかかった工数を可視化するタスク管理ツールなどがある。なかでも名刺管理サービスは、全社の名刺を一括管理するだけではなく、商談内容をオンライン上に残したりアプローチすべき企業と自社内の接点を可視化したりと、営業力強化に役立つシステムだ。

これからの時代を生き抜くためのウェルビーイング経営

 社員の健康をより意識した経営手法、ウェルビーイング経営。現代は昔と比べて気軽に転職できる時代であり、多くの企業では慢性的な人員不足の課題を抱えている。ウェルビーイング経営が軌道に乗れば社員の健康を守れるだけではなく、離職率の低下や組織全体の生産性向上などが望めるだろう。

 社員を大切に考えてこそ、労働者から「この会社で働きたい」と選ばれる時代だ。また、企業のウェルビーイング経営に対する取り組みは、求職者が就職先を選ぶときにも魅力的に映る点だろう。さまざまな施策を取り入れて、ぜひウェルビーイング経営を実現させてほしい。

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