経営企画
公開日: 2020.04.02
取り組み事例から見る、中小企業の課題を解決するためのITツール導入
2019年4月施行の「時間外労働の上限規制」をはじめ、「年5日の有給休暇の取得義務化」など、国を挙げての労働制度の抜本改革が推し進められている。
こうした法整備と並行して注目を集めているのが、企業における生産性向上や組織活性化への取り組みだ。限られた人材を最大限に活用する組織づくり、コア業務への特化や業務改革・効率化を図ることで、いかなるビジネス環境の変化にも対応できる体制を整備するのが目的である。
その目的を具体化するために必要なことは、技術革新が進むITツールの導入だ。IT活用が中小企業にどのような影響を与えているのだろうか。

日本の雇用の7割を占める中小企業・小規模事業者の働き方改革がカギ
中小企業庁が公表している「2019年版中小企業白書」によると、2016年の国内企業数は358.9社あり、その99.7%に当たる約358万社が中小企業および小規模事業者だ。全従業員の約70%に当たる約3220万人が、中小企業および小規模事業者に勤めている。先行して大企業の取り組みが進んでいる働き方改革だが、今後は、中小企業および小規模事業者での取り組みが重要となってくる。
しかし、働き方改革関連法の施行・適用の法整備が進む中で、中小企業や小規模事業者からは、さまざまな課題や不安を訴える声が聞かれるようになってきた。
中小企業や小規模事業者では現在、少子高齢化に伴う人手不足、事業承継や後継者の育成、グローバル化など多くの課題に直面している。その中で、魅力ある職場づくりや人材確保、業績の向上を図るような働き方改革を進める必要に迫られている。
しかし、働き方改革関連法の施行・適用の法整備が進む中で、中小企業や小規模事業者からは、さまざまな課題や不安を訴える声が聞かれるようになってきた。
中小企業や小規模事業者では現在、少子高齢化に伴う人手不足、事業承継や後継者の育成、グローバル化など多くの課題に直面している。その中で、魅力ある職場づくりや人材確保、業績の向上を図るような働き方改革を進める必要に迫られている。
働き方改革への取り組みで、中小企業が抱える課題
中小企業や小規模事業者が働き方改革に取り組む上で、そのメリットについて理解はできたとしても、現実的に実施に踏み切れないことも少なくない。
それには、中小企業や小規模事業者が抱える次のような課題が関係している。
それには、中小企業や小規模事業者が抱える次のような課題が関係している。
1. 社内外の関係者に対する、取り組みの理解
働き方改革を通じて、残業や休日出勤の見直し、リモートワークやフレックスタイム制を導入するためには、従業員の理解が必要となる。しかしそれ以上に難しいのが、取引先企業や消費者など、社外の関係者の理解を得ることだ。
業務の繁閑差、発注・納期の特定時期への集中がある中で、残業規制の範囲内で業務を行えるのかは、取引先企業などの協力なしには調整できない。また、発注企業側の残業規制のしわ寄せで、生産性が悪化したり、残業が増えたりする恐れもある。
業務の繁閑差、発注・納期の特定時期への集中がある中で、残業規制の範囲内で業務を行えるのかは、取引先企業などの協力なしには調整できない。また、発注企業側の残業規制のしわ寄せで、生産性が悪化したり、残業が増えたりする恐れもある。
2. 人材確保や育成、労働時間の管理、業界慣習などの改善
中小企業や小規模事業者は、大企業と比べて資金力や人材確保の面で不利な状況にある場合がほとんどだ。そもそも労働基準法などの法令への認識が甘い、労働時間の管理をしていない、効率の良い最新設備への投資が困難、人手不足や賃金高騰により従業員を採用できない、といった構造的な課題を抱えている。
さらに企業風土として「長時間労働が美徳」、「先輩社員や上司よりも先に帰宅できない」、「仕事は背中を見て盗むもの」といった慣習がある場合には、業務効率化や働きやすい職場環境を阻害している、それらの要因を改善するための意識改革から始める必要がある。
いずれにしても、不安や課題への対策を何も取らないままでは時代の変化に取り残され、企業の成長は見込めない。従来の価値観にとらわれずに、時代にマッチした魅力ある職場づくりの一歩を踏み出すことが大切だ。
さらに企業風土として「長時間労働が美徳」、「先輩社員や上司よりも先に帰宅できない」、「仕事は背中を見て盗むもの」といった慣習がある場合には、業務効率化や働きやすい職場環境を阻害している、それらの要因を改善するための意識改革から始める必要がある。
いずれにしても、不安や課題への対策を何も取らないままでは時代の変化に取り残され、企業の成長は見込めない。従来の価値観にとらわれずに、時代にマッチした魅力ある職場づくりの一歩を踏み出すことが大切だ。
ITツールの導入による業務効率化や売上アップを実現した中小企業事例
働き方改革に伴う企業の取り組みのひとつに「ITツールの導入」がある。
これまで手作業だった帳簿記入作業のデジタル化による管理業務の効率化、各種データの連携や自動化など、大幅な作業効率化や時間短縮の実現に効果を発揮する。また、業種は限られるが、時間や場所を選ばないコミュニケーションツールの活用は、出産や育児、介護や家庭の事情による遠方への引っ越しなどによる人材流出の防止、優秀な人材の確保につながる。
実際に、ITツールを活用して業務効率化や売上アップにつながった中小企業の事例が増えてきている。業種は、小売業、製造業、飲食業、宿泊業など多種多様で、本社所在地も特定の地域に限定されることなく、全国で取り組まれている。
地方の中小企業がどのような課題を抱え、IT活用を決断したのか。ITツールを導入したことで事業にどのような好影響があったのかを具体的な事例で見てみよう。
これまで手作業だった帳簿記入作業のデジタル化による管理業務の効率化、各種データの連携や自動化など、大幅な作業効率化や時間短縮の実現に効果を発揮する。また、業種は限られるが、時間や場所を選ばないコミュニケーションツールの活用は、出産や育児、介護や家庭の事情による遠方への引っ越しなどによる人材流出の防止、優秀な人材の確保につながる。
実際に、ITツールを活用して業務効率化や売上アップにつながった中小企業の事例が増えてきている。業種は、小売業、製造業、飲食業、宿泊業など多種多様で、本社所在地も特定の地域に限定されることなく、全国で取り組まれている。
地方の中小企業がどのような課題を抱え、IT活用を決断したのか。ITツールを導入したことで事業にどのような好影響があったのかを具体的な事例で見てみよう。
オリジナル珈琲豆の販売店・喫茶店でPOSレジ、シフト管理をIT化した事例
アルパカ舎は、富山県富山市でオリジナル珈琲豆の販売と喫茶サービスを展開している企業だ。店舗は市内に2店舗あり、従業員は5名。1号店は2014年に自宅スペースでオープンし、2018年の秋には2号店を開店。代表の「珈琲店をやりたい」という夢を叶えての起業だったが、人気が高まることで売上管理業務や喫茶スペースのスタッフのシフト管理など、バックオフィス業務の負担が重くのしかかるようになった。
そのため、業務効率化につながるITツールの導入を模索。富山市南商工会から案内された軽減税率対策補助金を活用し、利用中の会計システムと連携が可能なPOSレジサービスを導入。シフト管理が画面上で簡単に調整ができる上、タブレット端末対応のツールを採用した。
各種ツールを導入したことで売上管理の作業が効率化されただけでなく、商品登録をスタッフに任せられるようにもなった。悩みのタネだった事務作業を大幅に削減できたことで、本来やりたかった珈琲豆の焙煎や経営面の業務に、集中できるようになった。
そのため、業務効率化につながるITツールの導入を模索。富山市南商工会から案内された軽減税率対策補助金を活用し、利用中の会計システムと連携が可能なPOSレジサービスを導入。シフト管理が画面上で簡単に調整ができる上、タブレット端末対応のツールを採用した。
各種ツールを導入したことで売上管理の作業が効率化されただけでなく、商品登録をスタッフに任せられるようにもなった。悩みのタネだった事務作業を大幅に削減できたことで、本来やりたかった珈琲豆の焙煎や経営面の業務に、集中できるようになった。
日本酒製造メーカーにおいて多様な勤務形態の時間管理をIT化した事例
花の舞酒造株式会社は、創業150年を超える歴史がある静岡県浜松市の日本酒製造メーカーだ。酒米には山田錦を使い、静岡県原産の原料にこだわった酒造りを続けてきた。名誉杜氏による本社の酒造工場見学は高い人気を誇る。
60名の従業員が事業を支える同社では、日本酒造りだけでなく直営店の営業や卸売りなど、日々多くの業務がある。それによって、営業担当者は夜遅くなり、直行直帰も多く管理が難しいという課題を抱えていた。また、労務管理は社員1名が専属で行っていたため、他の業務を割り振れない環境も課題だった。
同社ではOA・IT販売企業と業務課題に関する意見交換をして、勤怠管理の課題が浮き彫りに。そこで、会計・給与システムと同系列の勤怠管理システムを導入し、外勤者にはスマホから行える打刻システムを採用。
その結果、内勤者・外勤者の勤怠状況がいつでも把握できるようになった。勤怠状況の確認から給与計算までの作業時間が8割以上削減できたという。これまで負担となっていた業務が効率化されたことで、成果を出すことに集中できる業務体制を作ることができた事例である。
60名の従業員が事業を支える同社では、日本酒造りだけでなく直営店の営業や卸売りなど、日々多くの業務がある。それによって、営業担当者は夜遅くなり、直行直帰も多く管理が難しいという課題を抱えていた。また、労務管理は社員1名が専属で行っていたため、他の業務を割り振れない環境も課題だった。
同社ではOA・IT販売企業と業務課題に関する意見交換をして、勤怠管理の課題が浮き彫りに。そこで、会計・給与システムと同系列の勤怠管理システムを導入し、外勤者にはスマホから行える打刻システムを採用。
その結果、内勤者・外勤者の勤怠状況がいつでも把握できるようになった。勤怠状況の確認から給与計算までの作業時間が8割以上削減できたという。これまで負担となっていた業務が効率化されたことで、成果を出すことに集中できる業務体制を作ることができた事例である。
OA機器の販売リース会社がITツールでデータを一元管理した事例
有限会社アクセスコーポレーションは、兵庫県尼崎市でコピー機の販売・リースを手がける企業だ。取引先への売り込みなどはせず、店舗への来店を通じてサービス提案をする営業方針をとっている。7名の従業員とともに、IT分野のサービスを拡大しているところだ。
これまで同社では、請求書発行用のソフトウエアを利用していたが、そのソフトウエアが使用できなくなり、緊急の対応に迫られた。これに対しては、もともと交流があった地元のITベンダーに緊急対応してもらうことで解決したが、この機会に、ITベンダーから中小企業でも利用できるクラウド型のERP(統合基幹業務システム)を提案された。
管理機能を段階的に増やせると知った同社は、会計、販売、顧客、在庫といった各種管理機能を5年かけて導入していった。導入を終えた頃には、一つの販売データを入力すれば、顧客や会計などの各システムに反映されるという、データの一元管理ができるようになり、利便性向上と時短効果による業務効率化を図ることができた。
IT活用のメリットである一元管理により、顧客の訪問記録や地域別の粗利益などのデータも活用できるようになり、売上・利益の向上にも寄与するなど、会社の基盤として貢献するシステムが完成した。
これまで同社では、請求書発行用のソフトウエアを利用していたが、そのソフトウエアが使用できなくなり、緊急の対応に迫られた。これに対しては、もともと交流があった地元のITベンダーに緊急対応してもらうことで解決したが、この機会に、ITベンダーから中小企業でも利用できるクラウド型のERP(統合基幹業務システム)を提案された。
管理機能を段階的に増やせると知った同社は、会計、販売、顧客、在庫といった各種管理機能を5年かけて導入していった。導入を終えた頃には、一つの販売データを入力すれば、顧客や会計などの各システムに反映されるという、データの一元管理ができるようになり、利便性向上と時短効果による業務効率化を図ることができた。
IT活用のメリットである一元管理により、顧客の訪問記録や地域別の粗利益などのデータも活用できるようになり、売上・利益の向上にも寄与するなど、会社の基盤として貢献するシステムが完成した。
ITツールを活用し、業務効率化による働き方改革を
働き方改革関連法の施行によって、大企業だけでなく中小企業にも新しい働き方への模索が求められている。その過程で必ずつきまとうのは、長時間労働の是正や最適な人材活用を前提とした、業務効率化と生産性向上だ。
ITツールの導入は、これら課題と向き合うために役立つ取り組みの一つ。ここで紹介した導入事例を参考に、自社でも取り組みを始めてみてはいかがだろうか。
ITツールの導入は、これら課題と向き合うために役立つ取り組みの一つ。ここで紹介した導入事例を参考に、自社でも取り組みを始めてみてはいかがだろうか。

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