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経営企画 公開日: 2021.10.20

「ウェルビーイング」がビジネスにもたらすメリットとは 国内外の企業事例も紹介

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 心身共に健康でいるための考え方として、近年注目を集めている「ウェルビーイング」。働き方の多様化に伴い、多くの企業でウェルビーイング向上のための制度導入などが検討されている。この記事ではウェルビーイングの意味やメリット、企業の導入事例について解説する。

【画像】Shutterstock

目次

ウェルビーイングとは

 ウェルビーイング(well-being)とは、心身ともに良好な状態にあることを意味する概念である。一般的に「幸せ」とも翻訳され、1948年にWHO(世界保健機関)の憲章で記載されたのが始まりだ。
<span> 健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)にあることをいいます。

【出典】健康の定義 - 公益社団法人日本WHO協会
 今までは、医療や心理、福祉の領域で認知されていたが、近年になってビジネスシーンでも重要視されるようになった。  

ウェルビーイングと一般的な「幸せ」の違いとは

 ウェルビーイングの定義を踏まえると、一般的な幸せとの違いが気になる人もいるだろう。

 私たちがイメージする「幸せ」とは、英語でいう「happiness(ハピネス)」に当たる。happinessという言葉は、感情に関する単語であり、「幸せだ」と感じた、その瞬間的な“気持ち”を指す。仕事を頑張った日の終わりに、ビールを飲み干す瞬間に感じる幸せは、happinessに相当するだろう。

 一方で、ウェルビーイングはWHOの定義を踏まえると、人生を通して幸せな“状態”であることを意味する。仕事はもちろん、プライベートや関わる人たちとの関係性、身体の健康状態など、あらゆる要素を総合的に鑑みて、「今の人生は幸せ」だと感じるのであれば、ウェルビーイングが達成されたと言える。

 以上を踏まえると、ウェルビーイングと一般的に言われる幸せは、対象となるものが異なることが理解できるだろう。

ビジネスの場にウェルビーイングが必要とされる背景

【画像】shutterstock
 なぜ近年になって、ウェルビーイングがビジネスシーンで重要視され始めたのか。考えられる背景を解説していく。

価値観の多様化

 日本の戦後の高度経済成長期を支えたのは、企業のために身を粉にして働く「モーレツ社員」だった。しかし、日本経済が成熟し、時代が変化していくにつれて、仕事とプライベートの両立や福利厚生、キャリアプランなど、仕事に求めるものが多様化し、仕事にも幸福度が重要視されるようになった。

働き方改革の推進

 2019年4月より「働き方改革関連法」が段階的に施行され、企業に対して「時間外労働の上限」「年次有給休暇の確実な取得」「同一労働同一賃金」などが義務付けられるようになった。従業員の健康を守ることで、離職率の低下や生産性向上に繋がると期待されている。

 働き方改革の一手としては、IT活用の推進も重要なので、ぜひ以下の記事も参考にしたい。

医療費・社会福祉費の増加

 高齢者人口の増加と労働人口の減少により、企業が負担する医療費・社会福祉費が年々増えている。企業が従業員の健康を守ることで、結果的に企業が負担する医療費・社会福祉費が減ることも期待される。

海外でのウェルビーイングの取り組み

【画像】shutterstock
 ウェルビーイングは、欧米で盛んに取り組まれている。ここでは、海外のウェルビーイングの事例を紹介する。

グーグル

 グーグルは2012年に、社員の生産性を高める労働改革プロジェクト「プロジェクト・アリストテレス」を実行。4年の歳月と何百億ドルもの費用をかけ、あらゆる視点から生産性を上げる研究が行われた。その研究結果の一つとして「チームを成幸へ導く5つの鍵」という、生産性の高いチームの共通事項をまとめた。
  • 心理的安全性 →「チームの中でミスをしても、それを理由に非難されることはない」と思えるか。

  • 相互信頼 →「チームメンバーは、一度引き受けた仕事は最後までやりきってくれる」と思えるか。

  • 構造と明確さ →「チームには、有効な意思決定プロセスがある」と思えるか。

  • 仕事の意味 →「チームのためにしている仕事は、自分自身にとっても意義がある」と思えるか。

  • インパクト →「チームの成果が組織の目標達成にどう貢献するかを理解している」か。

ヴァージン・パルス

 以上の項目で最も重要視されているのが、心理的安全性だ。「人間関係において、リスクある行動をしてもこのチームは安全」という共通認識を持てるかどうかで、メンバーの生産性は大きく変わる。
 ヴァージン・パルス(Virgin Pulse)は、包括的なデジタルヘルス、ウェルビーイング、エンゲージメント事業を行うアメリカの企業である。同社は、テクノロジーを駆使した、従業員エンゲージメント向上に効果的なウェルネスプログラムを提供している。

 毎日の歩数やカロリー消費、運動時間を自動で測定する機能だけでなく、栄養摂取や睡眠、人間関係といった、個人の興味や悩みに合わせて、データに基づいた効果的なプログラムがアプリ上で提供される。

 ヴァージン・パルスのように、個人のウェルビーイングを推進させるサービスは日本でも提供されている。代表的な企業として、AIを活用した健康管理アプリを提供する「FiNC」がある。

日本でのウェルビーイングの取り組み

 ウェルビーイング向上のために、どのような施策を実施すれば良いのか。日本の企業の事例を参考に考えてみる。

イトーキ

 オフィス用家具を製造するイトーキは、2017年2月に健康経営宣言を制定。12の領域で、健康経営の取り組みを行なっている。例えば、社内組織の領域においては「健康経営推進委員会」を設立し、社員の健康に関する取り組みの企画・実行を担う。また、2018年には首都圏のオフィスを集約し、心身の健康を保てる空間づくりを行っている。

デンソー

 自動車部品メーカーのデンソーは、2016年9月に健康宣言を発表。国内外のグループ会社とは別枠で「健康協議会」を設置したり、各部署で健康リーダーを配属したりといった取り組みを行っている。労働安全衛生法に基づいた社員のストレスチェックや睡眠状態の判定なども実施。取り組み内容が評価され、2020年には経済産業省から「健康経営銘柄」に認定された。

Zホールディングス

 代表取締役社長CEOによる健康宣言のもと、CEO直下にCCO(Chief Conditioning Officer)を任命。すべての働く人が心身共に最高のコンディションで業務に従事することができる企業を目指し、健康経営の要素として「予防」「就労支援」「オフィス環境」の三つの領域を定義。社内レストランで摂取した栄養素の分析や健康に関するセミナー開催など、多くの取り組みが行われている。

企業がウェルビーイングに取り組むメリット

 では、企業においてウェルビーイングのための制度や施策を導入するメリットを解説していく。

健康経営の推進

 健康経営とは、従業員の健康管理を経営視点から考え、戦略的に実施する経営手法である。従業員の健康を企業が守ることで生産性を向上させ、業績アップや企業イメージの向上、離職率の低下が期待できる。

 政府の成長戦略である「日本再興戦略」の一つの国策として健康経営を掲げられたことから注目を浴びるようになった。また、経済産業省も健康経営を積極的に取り組んでいる企業を健康経営銘柄として選定している。

EVP(従業員価値提案)の向上

 EVPとは、Employee Value Proposition(エンプロイー・バリュー・プロポジション)の略で、「従業員価値提案」という意味を持つ。報酬や福利厚生にとどまらず、その企業で働く意欲やエンゲージメントを高めるための施策や取り組みなど、従業員が企業に期待する価値全般を指す言葉として定着しつつある。

 働き方の多様化により、従業員が企業に求めるものも多様化している。ウェルビーイングを意識することで、従業員が自社で働く意義を見出すことができれば、EVPの向上も期待できるだろう。

経営コストの削減

 ウェルビーイングを重視し、従業員の健康が向上すれば、生産性向上による人件費の削減にもつなげられるだろう。医療費削減にもつながり、結果的に企業が負担する医療費や社会福祉費も減っていく。労災件数も減り、それに伴うコストも減少する。

 また、健康障害による離職率が下がることが期待できるので、採用コストも抑えられる。企業イメージも向上し、企業PRの効果も見込めるだろう。

ウェルビーイングの考え方

 ウェルビーイングにはさまざまな考え方が存在する。ここでは国内で主要な考え方三つを紹介する。

ギャラップ社の考え方

 世界150カ国の世論調査を行うギャラップ社が考えるウェルビーイングは五つの要素に分けられる。
Career Well-being
 自分の時間の使い方を知り改善することや、好きなことを仕事にすることでキャリアに対する納得感が得られます。
Social Well-being
 日々の暮らしの中で深い人間関係と愛情を持つことで、社会生活が充実します。
Financial Well-being
 支出や収入の状況をきちんと管理することで、経済的に健康的な状態になれます。
Physical Well-being
 心身共に健康で、物事を成し遂げるのに十分なエネルギーを持っている状態です。
Community Well-being
 住んでいる地域のコミュニティーと適切な関わりを持つことは、充実感をもたらします。
 以上の五つの要素に基づき、自社で具体的な施策の企画と提案をするといいだろう。ちなみにギャラップ社は、日本でベストセラーとなった自分の強みが分かる本、トム・ラス著『ストレングス・ファインダー』  も出版している。

石川善樹氏の考え方

 予防医学研究者で、国内のウェルビーイングの第一人者と言える石川善樹氏は、ウェルビーイングは「体験」と「評価」の二つの構成要素で成り立っていると主張する。体験とは客観的な出来事を指し、評価とは体験に対する主観的な感情を指す。

 例えば、昼間の商談で契約を成立させたが、退勤前に些細なミスで大口顧客に叱られたとする。多くの人はこの日は最悪だったと評価してしまうだろう。つまり、人間は全ての体験を平等に評価できず、最後に起きたことが重要ということだ。

 そこで石川氏は、1日の終わりに今日起こった出来事に対して印象に残ったことだけを振り返る「To Feel」という考え方を提唱する。純粋に今日印象に残った出来事に対して、抱いた感情だけ振り返ることで、その日の評価を良い方向へ上げていく。

前野隆司氏の考え方

 慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長の前野隆司氏が提唱するウェルビーイングは、以下のように構成される。
  • やってみよう!因子:自己実現と成長
  • ありがとう!因子:つながりと感謝
  • なんとかなる!因子:前向きと楽観
  • ありのままに!因子:独立と自分らしさ
 いずれか一つが満たされているのではなく、四つの因子を全てバランスよく向上することで、ウェルビーイングに到達していくと前野氏は主張する。

ウェルビーイングに関する本・書籍

 ウェルビーイングをより深く理解するために、参考となる書籍を紹介する。

『WIRED VOL.32』(コンデナスト・ジャパン著/プレジデント社)

 テックカルチャーメディア『WIRED』日本版で、ウェルビーイングが特集された。WIRED独自の視点で、ウェルビーイングが包括的に掘り下げられている。ウェルビーイングの全体像を掴むのに最適だ。

『幸福の習慣』(トム・ラス著/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 本誌は、ギャラップ社が世界150カ国の世論調査から、「幸福とは何か」を突き詰めた集大成と言える一冊。ギャラップ社が考える幸福に必要な五つの要素について、より深く学べるだろう。

『フルライフ』(石川善樹著/NewsPicksパブリッシング)

 石川善樹氏は数ある著書を出版しているが、本誌はウェルビーイングについて考察し、時間の使い方という視点から具体的なノウハウを解説している。ビジネス視点で執筆されており、すぐに実践しやすいのも特徴と言える。

『幸せのメカニズム』(前野隆司著/講談社)

 前野隆司氏が提唱するウェルビーイングの考え方を学べる一冊。幸せに関するあらゆる理論や自ら調査した結果を基に、幸せに必要な4つの因子がどのように導き出されたか理解できる。

企業でウェルビーイングを導入し、従業員の幸福度を上げる

 本記事では、ウェルビーイングがビジネスシーンで注目された背景や導入するメリットについて解説した。変化のスピードが激しい現代、変化に対応するために企業は社員一人ひとりの「幸せ」と向き合うことが求められている。
 そして、企業が社員の「幸せ」を尊重し、多様な働き方を実現するためには、組織や業務フローを変革していく必要がある。以下の資料は、Sansan株式会社が提供するDXサービスが、働き方における経営課題をどう解決できるのか紹介している。企業が働き方を変えていくためのヒントになるので、ぜひ参考にしてほしい。

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