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人事 公開日: 2021.09.27

長時間労働の原因とは?  リスクや対処方法について徹底解説

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 長時間労働は社員 の生産性や健康に影響するだけでなく、企業の業績にも関わる。政府も働き方改革推進の一つとして、長時間労働の是正を掲げており、国の重要な問題として認識されている。この記事では、日本の長時間労働の実態を踏まえ、その原因や対策、成功事例を解説していく。

【画像】Shutterstock

目次

長時間労働の現状

 長時間労働の原因を把握するために、まずは日本の労働時間の現状について解説する。

長時間労働と見なされる目安

 日本の労働基準法では、1日8時間週40時間が法定労働時間として定められている。ただ、業界や業種によっては、この規定内の業務時間に収めることが難しい場合もある。そこで労働基準法第36条、いわゆる「36協定」では、政府に届出を提出すれば、月45時間年間360時間の時間外労働残業が可能となる。この36協定で定められている時間外労働を超えて労働してしまうと、長時間労働に当てはまると言えるだろう。
 月間100時間以上、または2~6カ月平均で月80時間以上の残業で、健康障害のリスクが高まるとされ、「過労死ライン」と呼ばれている。また、過労死等防止対策推進法第2条において、「過労死等」は以下の三つのいずれかに当てはまるものと定義されている。
  • 業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
  • 業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
  • 死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害
 また、月160時間の残業、月間の合計労働時間が333時間を超えると、精神疾患を患う可能性が高いとされている。精神疾患は、以下の三つのいずれかに当てはまると認定される。
  • 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
  • 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
  • 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

日本における労働状況

 近年、働き方改革の推進や仕事の価値観の多様化により、長時間労働を避ける社員が増えている印象を受ける。実態はどのように変化しているか、いくつかの資料を参考にしていく。

 まず、厚生労働省の資料 を参照すると、日本全体の総実労働時間は減っているが、所定外労働時間は増加傾向にある。
 そこで労働者の内訳を見てみると、パートタイム労働者の比率が増加傾向にあり、かつ総実労働時間が減少していることが分かる。それに対し、一般労働使者の総実労働時間は依然横ばいのままだ。
 このデータを参照すると、日本の平均労働時間が減少しているのは、パートタイムなどの非正規雇用の労働時間の減少が影響しており、正社員の労働時間は減少していないと考えられる。

 さらに、OECD各国の時間外労働の割合を比較すると、週50時間以上働いている労働者の割合は、OECD平均値が13%なのに対して、日本は21.9%と平均を大きく上回る。
 以上のデータのみを参照すると、日本の労働時間の実態は、正社員といった一般労働者の労働時間は減少しておらず、かつ時間外労働は増加している傾向があることから、長時間労働の是正は進んでいないと見受けられる。

 しかし、近年リモートワークが進むことで、社員がオフィスで業務を行う機会が減り、労働の実態が見えづらくなりつつある。以下の記事では、リモートワークの推進によって社員の「見えない残業」について解説している。リモートワークで部下の状況把握に悩んでいる方は、ぜひ参考にしていただきたい。

長時間労働のリスクとは

【画像】Shutterstock
 長時間労働は、企業の業績に大きく影響する。ここでは、長時間労働に潜むリスクを解説していく。

生産性の低下

 長時間労働は、一見、業務遂行時間が多く、生産性が上がると考えられる。しかし、生産性は投下したコストに対してどれくらいの付加価値を生み出せたかの割合である。労働時間が多いということは、それだけ投下コストが増えるということなので、単純に生産性が上がる訳ではない。

 逆に、疲労が蓄積されることで集中力が低下し、労働時間に対する成果が低下する可能性がある。プライベートとの両立も難しくなり、仕事へのモチベーションに影響を与える場合もあるだろう。社員がリフレッシュできる時間が減ることで、心身の疲労が回復せず、さらに生産性の低下が起こるという負のスパイラルが発生する。最悪の場合、社員の健康を害し、病気の発症を招くかもしれない。

人件費の増加

 長時間労働が常態化してプライベートとの両立が成り立たないと、離職率が上がる可能性がある。社員の離職が常態化していると、常に新しい社員の採用を行う必要が生まれ、採用コストが上がってしまう。

 採用コストが上がるだけでなく、新しい社員の教育や業務引き継ぎといった業務が発生し、通常業務に集中できる時間が減ってしまう。結局、通常業務に取り組むために所定の労働時間外で対応する必要が生じる。その結果、残業代を支払う金額が増加し、人件費を圧迫してしまう結果につながる。

社会的信用の失墜

 長時間労働が常態化し、いわゆる「ブラック企業」といった評判が出てしまうと、採用力の低下を招く。採用力の低下は、自然と社員の生産性にも影響し、最終的には企業の業績にも影響を与えてしまう。

 また、長時間労働の原因によって、社員が過労死したり精神疾患を患ってしまったりすると、労災認定が下される場合がある。行政指導や訴訟を起こされてしまうと、企業の信用は一気に失われかねない。

長時間労働の原因

【画像】shutterstock
 長時間労働が起きてしまう原因は何か、ここでは多くの企業で発生している主な原因を解説する。

原因①:業務過多または人員不足

 業種や職種によっては年間の業務量に偏りがあり、一時的に長時間労働をしてしまう時期がある。  とくに繁忙期があると、一人ひとりに求められる業務量がどうしても多くなってしまう。社員数は柔軟に変えることが難しく、自然と長時間労働をしてしまうだろう。

 また、受託業務を行っている企業の場合、納期が近づくにつれて時間外労働を強いられる場合もあるだろう。取引先からの指示で予定外の業務が発生する可能性が高い。

原因②:マネジメント不足

 長時間労働の原因の多くは、管理職のマネジメント不足だ。社員一人ひとりの状況を把握せずに適切な業務指示が行えていないと、所定労働時間内に社員が業務を終えることができない。個々人の業務状況を把握せず一方的に業務命令を下していると、部下のモチベーションの低下や信頼関係にも影響する。

 本来は必要でない業務の指示や、労働環境の改善を試みない「名ばかり管理職」の存在も、長時間労働を常態化させ、生産性を著しく低下させている可能性が高い。

原因③:長時間労働を善しとする企業文化

 戦後の高度経済成長期では、働けば働くほど業績が上がり、身を粉にして働く「モーレツ社員」が多く存在した。その名残で、多くの企業では労働に対する“成果”よりも“時間”に対して評価する文化が根強く残っている。

 社員一人ひとりが求めている業務内容や成果を評価し、かつより短い時間で業務を遂行できるように働きかけることが重要だ。

原因④:無駄な業務が多い

 ゴールが設定されていない会議や朝礼、目的のない業務など、必要かどうか疑わしい業務が日常的に発生していると、社員は本業に集中できず、長時間労働につながる。社員一人ひとりが、自身の担当する業務の目的を理解することも大切だ。しかしそれ以上に、業務を言い渡す上司が、部下に指示する業務の目的を明確に共有することが求められる。

 社員に指示した業務の目的が明確に共有できていないと、社員は何のためにやっているのか分からず、モチベーションが下がり生産性の低下を招いてしまう。業務のコミュニケーションが不足していると、部下との信頼関係が崩れてしまう可能性もある。
 
 社員によっては、残業をしているにもかかわらず、必要な業務を進めていない場合もある。このような環境が常態化していると、社員が生み出す付加価値が上がらないまま人件費が上がり、業績に大きく影響を与えるだろう。労働時間で評価するのではなく、与えられた業務に対する成果を評価することで、社員が不要な残業をしない労働環境を作る必要がある。

長時間労働の対策方法

【画像】shutterstock
 長時間労働を改善するためには、以下の対策を順番に取り組むといいだろう。

対策①:業務の棚卸し

 第一に行う必要があるのが、今行われている業務の棚卸しだ。部下に本当に必要な業務を指示できているか、必要だとしても非効率な方法で進めていないか、一つひとつの業務を把握する必要がある。

 現状を把握することで、無駄な業務の発見やより効率的に業務を進めるための方法が浮かんでくる。

対策②:評価制度の見直し

 評価制度を見直すことも、長時間労働を大きく改善することができる。社員の評価は主観的なもので、なかなか客観的に評価する方法を生み出すことは難しい。しかし、企業の目的は業績の向上で、そのためには社員一人ひとりが、企業から求められる成果を生み出すことが重要だ。長い時間働いたとしても、それに見合った成果を社員が生み出せていないと、企業の利益につながりにくい。

 したがって、労働時間に対して評価するのではなく、与えられた業務の成果に対して評価する制度の導入が必須と言える。ただ、完全な成果主義の評価制度にするのではなく、社員の成果に至るまでの姿勢も一定評価することで、社員のモチベーションを維持し、今後の生産性を上げられるだろう。

対策③:勤怠管理システムの導入

 長時間労働の是正には、管理職が部下の状況を把握することが重要だ。しかし、部下の状況を上司の目だけで追うのは至難の技である。上司の管理業務の負担を少しでも抑えられるよう、可能な範囲でITツールに頼ることも必要だろう。

 社員の労働状況を管理する一手段として、導入を検討したいのが勤怠管理システムだ。社員にとって、使い勝手の良い勤怠管理システムを導入すれば、上司が部下の状態を簡単に把握できるだけでなく、社員が自分自身の業務進行度を整理し、自ら生産性を上げるきっかけを作ることもできる。

国による長時間労働に対する主な取り組み

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 長時間労働の是正は、政府の政策の中でも重要視されている。政府が現在、具体的にどのような取り組みを行っているか解説していく。

 まず、政府は長時間労働を是正するために、厚生労働大臣を本部長とする「長時間労働削減推進本部」を設置。各都道府県でも、労働局長を本部長とする「働き方改革推進本部」を設置し、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進などの「働き方改革」について、労使団体への協力要請や情報発信などを行っている。

 労働基準法の法改正も進んでいる。具体的には、36協定の改正だ。従来の36協定では、時間外労働の上限を超えても行政指導のみにとどまっていたが、特別な事情で上限を超える場合、労使の合意があったとしても以下の上限が設けられた。上限を超えると、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性がある。
  • 月間45時間を超える残業は6カ月まで
  • 年間の残業時間は720時間以内
  • 複数月の平均残業時間が80時間以内
  • 月間の残業時間は100時間未満
長時間労働の是正は、働き方改革の三つの柱の一つだ。残りの二つは「年次有給休暇の時季指定」と「同一労働同一賃金」だ。働き方改革について詳細を知りたい方は、以下の記事が参考となるだろう。
 また、2014年11月に「過労死等防止対策推進法」を施行し、長時間労働が原因による過労死を防止するための取り組みが行われている。

長時間労働削減の企業事例

 自社の長時間労働を削減していくために、実際に成功している企業の事例を紹介する。

事例① UZABASE

 国内外でデータベースやメディア事業を展開するUZABASEは、所定の労働時間を一切定めない「スーパーフレックス」を導入している。出社義務もなければ、指定の出勤時間も定められていない。集中できる場所や時間も社員が個別で決めて業務を行う。

 求められる成果を最大化させるために、業務時間と休暇時間のバランスなど、社員が自ら働き方をデザインすることが重要視されている。業務時間を自分で調整できるので、長時間労働を抑える働きも期待できる。

事例② エーデル土山

 時間外労働がとくに多い業界の一つとして介護業界が挙げられる。しかし、滋賀県甲賀市にある介護施設エーデル土山では、長時間労働を改善し、離職率を40%から7%まで引き下げ、年平均残業時間を0.02時間まで縮めることに成功した。

 最新の介護機器の導入や社員とのコミュニケーション機会を頻繁に取るなど、介護業界の離職の3大原因である「残業」「腰痛」「メンタル不調」を改善するために、さまざまな取り組みを行った。労働環境が過酷になりやすい看護業界だからこそ、「スタッフファースト」で取り組むことで長時間労働の対策に成功した事例といえる。

事例③ ピコナ

 3DCGプロダクションのピコナでは、「残業チケット」を社員に支給することで、月にできる残業を制限する取り組みを行っている。社員は残業する際は、社長にチケットを提示する必要がある。ただ提示をすれば残業ができる訳ではなく、本当に必要がどうかコミュニケーションを取った上で、最終的な判断が下される。

 アニメーション業界の平均残業時間は月平均100時間  といわれている中で、ピコナも以前は月の残業時間が100時間を超えることが多かった。しかし、この制度の導入で、時間外労働が80%も削減されて平均残業時間が20時間を切る月もあり、社員の時間の使い方にメリハリが生まれた。ピコナによる残業時間の大幅な削減は、業界に留まらない大きな注目を浴びている。

事例④ 大和証券

 大手初見会社の大和証券では、2006年に鈴木茂晴会長が「ワークハード・ライフハード」というモットーのもと、19時前退社が導入された。支店長以下の社員は19時以降の残業をする際は、上司に申請をしなければならない。さらに残業をしていると人事部からアナウンスが入るようになっている。

事例⑤ SCSK

 数々のITサービスを提供するSCSKでは、平均月間残業時間20時間以下を掲げ、この目標を達成した部門には浮いた残業代を賞与として還元するようにした。目立った成果を上げた場合は、さらなる賞与の上乗せも行う。

 また、残業の認証については、残業時間にあわせて段階的に承認者の役職が変わる制度も存在する。課長職が月間20時間までの認証を担当し、最終段階である月間80時間を超える残業は社長の認証を必要とするものだ。

 加えて、マネジメント層に長時間労働抑制の意識を醸成するために、月間60時間を超える残業を行った場合は該当組織(部・室単位)の業績評価に賦課金(ペナルティー)を反映する制度も導入。 部門単位で長時間労働を対策することで成功した事例だ。業績もアップし、ここ数年は増収増益の状態を維持し続けている。

業績向上のために長時間労働の是正を

 企業にとって、長時間労働の是正は経営課題の一つである。  過度な残業を避けることで、社員の生産性が向上し、離職率を低下させ、最終的に企業の業績アップにつながる事例を紹介した。この記事を参考にすることで、ぜひ自社の長時間労働の改善に取り組むきっかけを掴んでいただきたい。

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