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営業 公開日: 2022.08.31

CRMとは?導入メリットやツールの運用方法についてわかりやすく解説

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 新型コロナウイルス感染症の拡大によって、多くの企業が苦戦を強いられているのではないか。業績の見通しが悪い企業にとって、その回復が喫緊の課題となるだろう。この記事では、業績回復の一手となりうるCRMについて、導入価値を最大化して営業力を強化する方法を紹介する。

【画像】Shutterstock

目次

高まるCRMの需要

 新型コロナウイルス感染拡大の影響下では、オンライン会議、オンラインセミナー、オンライン商談などの「非対面営業」が重要視されている。その中で商談につなげるために重要とされているのが、CRM(Customer Relationship Management、カスタマーリレーションシップマネジメント)である。

 IT専門の調査会社IDC Japanが2021年7月に発表した『国内CRMアプリケーション市場予測』によると、2020年の国内CRMアプリケーション市場は、市場規模が約1,871億、前年比成長率6.7%だった。

デジタルコマース分野の勢いが増すことも手伝って、長期的には増加傾向が予測される。2025年まで年間平均5.5%の成長率で推移し、2025年には市場規模約2,448億円になる見立てであり、CRMの市場は年々増加傾向にあることが分かる。
 CRMで確認できることは、主に次の三つである。
  • 顧客の基本情報
  • 顧客との過去の取引実績
  • 顧客とのこれまでの接点や効果
 つまり、顧客の正確なデータを確認し、適切な営業フォローを実現して商談につながりやすくするための手段の一つと言える。ただ、CRMを導入したものの、当初見込んでいた以上の成果が出ていないことに頭を抱える担当者もいるのではないだろうか。

 なぜ、成果が出ないのか。詳しく解説しよう。
CRMとは
 「Customer Relationship Management」の略であり、「顧客関係管理」意味する。顧客関係管理とは、顧客を中心に考えてビジネスを展開し、利益を最大化しようとするマネジメント手法だ。従来の大量消費社会では全ての顧客を総体的に扱うマスマーケティングが主流であった。しかし、価値観の多様化により、顧客一人ひとりに合ったOne-to-Oneマーケティングの必要性が出てきた。そこで顧客のきめ細かい管理を主体とするCRMが注目されるようになったのである。

 そして、CRMの考え方に基づいて、顧客に関連したあらゆる情報を管理・活用して見込み客の購買意欲を高めたり既存顧客へのクロスセルを促したりするITツールをCRMシステムと呼ぶ。本来のCRMという言葉はあくまでもマネジメント手法を指し、それを実現するITツールである「CRMシステム」とは別の言葉である。

 しかし、現在では慣習的にITツールであるCRMシステムを「CRM」と呼ぶケースが多くなっている。多くのCRMにはマーケティング機能も備わっているため、さまざま施策の集客や販促活動にも役立つだろう。本記事においても特段の記載が無いかぎりCRMとはCRMシステムを指す言葉として記載する。
CRMとSFAの違い
 CRMと似た機能を持つツールにSFAがある。SFAとは「Salesforce Automation」の略称で、日本語では「営業支援システム」や「営業活動自動化」と呼ばれる。その名の通り営業部門の支援のために作られたシステム、属人化しがちな営業ノウハウをデータ化して共有するのが目的だ。顧客データを属人的な資産ではなく会社の資産とするためSFAが開発されたのである。よって、SFAは営業のためのツールという位置づけが強く、営業スタッフを支援する機能が主体となっている。

 一方でCRMの目的は顧客データの全社統一である。バラバラに管理してしまいがちな部門ごとの顧客データを一元化してデジタル化し、ビジネスモデル全体を顧客中心かつデータドリブンに変革するためのツールだ。営業に特化したツールであるSFAとは目的の点で異なると言えるだろう。

 しかしながら、CRMもSFAも顧客データを中心としたツールには違いないので、昨今ではCRMとSFAを統合したツールや、SFA機能の付いたCRM、逆にCRM機能の付いたSFAなどもリリースされており、その境界はあいまいになってきている。

CRM導入のメリットとデメリット

【画像】Shutterstock

CRM導入のメリット

1.顧客満足度の向上
 CRMを導入すると顧客満足度の向上が期待できる。なぜなら部門間の顧客データが一元管理され、顧客アプローチの不整合が少なくなるからである。

 例えば、数年前に自社の製品を使うのをやめて他社製品に乗り換えた顧客がいたとする。その顧客から久しぶりに営業部門に問い合わせがあったとしたら、以前他社へ移った経緯も踏まえてアプローチするのが最適な方法であろう。

 しかし、数年の間に配置転換などで営業スタッフが変わり、その顧客と面識の無いスタッフが対応すると、新規顧客としてアプローチしてしまうケースが考えられる。かつての顧客である事実をしっかり覚えてもらっているのと忘れられているのとではどちらの満足度が上か言うまでもないだろう。

 このように、CRMの導入によって、スタッフの配置転換や対応する部門の変更などで顧客データが失われず、資産として保存されるため、顧客に不快感を与えるケースの減少が期待できる。
2.生産性の向上
 CRMを活用すれば属人化しがちな顧客データを一元的に管理でき、情報共有を効率的に行える。顧客データへのアクセス性が高まれば営業担当者同士で、他部署とも連携しやすくなる。また、蓄積した情報を基にして適切な営業戦略を立案することも可能だ。顧客データを分析することによって、顧客に合わせた最適なアプローチを選択することができるのである。
3.データドリブンな経営の根拠
 CRMを長期間にわたって使っていくと顧客データが蓄積されていく。ある程度データが蓄積されると、CRMに付属している分析機能を用いて顧客データを可視化し、新たなマーケティング戦略や経営判断の材料とすることができる。

 データを元に戦略を練れば、変化の激しい市場環境に合わせたビジネスモデルの改革が可能となる。

CRMのデメリット

1.運用コストがかかる
 CRMは運用コストがかかるのが普通である。 中には無料で提供されているCRMもあるが 機能が制限されていたり、小規模なデータ量にしか対応しておらず、本格的な運用に耐えられるシステムは少ない。

 料金体系はサービスを提供している会社によってさまざまだが、利用するユーザー数(社員数)や、管理するデータ量に応じた料金であるケースが多い。 たくさんの顧客データや社員を抱える企業が運用するにはそれなりのコストがかかると考えるべきである。
2.社内で定着しないリスクがある
 せっかくCRMを導入しても社員が一向に使わず形骸化してしまうリスクがある。現場の社員にとってはただでさえ忙しい業務フローが変化し、新しいITツールの使い方を覚えなければいけないのはストレスになる。

 このリスクは、導入を決定した経営層と現場の溝をしっかりと埋めれば、ある程度の軽減が可能である。 CRMが定着するかどうかは、社員がCRM導入の必要性をちゃんと理解できているか、経営層が社員とビジョンを共有する努力をしているかにかかっていると言えよう。

CRM導入と活用のポイント

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1.社員が使いこなせるツールを選ぶ
 CRMが現場に定着するかどうかの話とも関わってくるが、導入する際には社員が使いこなせるツールの選定が重要である。特に海外のITツールは日本人からすると非常に難解で使いにくいケースがある。

 いくら高額で高機能なツールを導入したとしても、社員が使えなければ宝の持ち腐れである。ツールを選ぶ際には経営層の理念やビジョンだけでなく、現場の意見も十分考慮した上で総合的に判断する必要がある。

2.導入時に課題と目的を明確にする
 CRMが先進的なシステムであるとはいっても、ただ導入するだけで効果が上がるわけではない。 ITツール全般に言えるが、このようなツールは現在ある経営上の課題を解決するものであり、課題が分かっていないのに導入しても効果が出ないケースが多い。

 導入する際には、自社の経営上どのような課題があるのか、何を改善したいのか、そのためにはどのような機能が必要なのか、それを明確にした上でツールを選ぶべきである。

3.費用対効果を検討する
 課題と目的が明確になっていれば、必然的にどのような機能が必要かも明確になる。 選定の際には自社に必要な機能が必要十分に近い形でそろっているツールを選ぶべきである。自社に必要の無い機能があまりにも多いツールを選んでもコストばかりかかっては意味がないので、自社に最適なツールを選んだ際、導入コストと導入することで得られる効果について検討することも重要だ。

4.クラウド型かオンプレミス型か
CRMはクラウド型かオンプレミス型かに分類される。クラウド型はインターネットを通じてCRMを利用する手法である一方、オンプレミス型は社内のサーバーにシステムをインストールするのが特徴だ。

クラウド型は比較的コストを抑えられ、メンテナンス不要であるのに対して、オンプレミス型ではその企業に合わせてカスタマイズしやすいという点がそれぞれの主なメリットである。予算やメンテナンスを担当する人材がいるか否かなど、自社の事情に合わせて選んでほしい。

5.外部システムとの連携ができるか
 CRMを選ぶ際に非常に重要なポイントが外部システムとの連携である。つまり、導入しようとしているCRMが現在自社で使っているシステムと連携できるかどうかだ。CRMの目的は全社的な顧客データの統一であるので、異なるデータ形式のシステムが複数あると、効果を発揮しにくい。自社のシステムと連携が可能であるかも考慮に入れて検討するべきであろう。

6.サポート体制の充実度を検討する
 先述したように、社員が使いこなせて、定着するかどうかが一つのリスクであるので、CRMの運営会社がどこまでサポートしてくれるかを選定の基準に入れるべきである。導入時の支援はどこまでやってくれるのか、テクニカルサポートはどこまでやってくれるか、無償でやってくれるのか、有償なのか、それらを十分に検討した上で選ぶべきだ。

7.無料で試すことができるか
 ある程度導入するツールに目星がついたものの、実際に使用してみないと不安だという声もあるだろう。その際、候補のツールに無料トライアルがあればぜひ活用してみてほしい。

 実際に使うことで直感的に使い心地の善しあしを判断できる上、導入後どのように活用していくかのイメージも湧きやすいはずだ。

8.社内体制と運用ルールを構築する
 CRMを導入したとしても社員によって入力にムラがあると効果が発揮しにくくなってしまう。 例えば、ある社員は頻繁にCRMのデータを更新するが、別の社員は時々しか更新しないとなると、情報の粒度にムラができ、情報の欠落が起きてしまう。

 これを防ぐにはCRMのデータを更新するルールを定め、守るように社員に促すのが有効である。業務フローが CRMを中心に回る体制を作るのが望ましい。

9.短期的な成果にこだわりすぎない
 CRMを始めDXのツールは、長期的な戦略で運用するシステムである。短期的に効率化がなされるケースもあるが、それはCRMの価値の本質ではない。長期的にデータを蓄積し、データに基づいて中長期的な経営戦略を練るのがCRMの本質である。

 仮に短期的に成果が出なかったからといって、すぐに廃止してしまうのではなく、PDCAを回しながらある程度長期的に運用してみるのが大事である。

CRMの効果が出ない原因と対処方法

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 CRMを導入しても成果が出ないのは、CRMに入れている顧客データに原因がある。なぜならCRMは顧客データをベースに営業フォローなどの「戦術」を考えるツールであり、軸となる顧客データの精度が低いと「打ち手」が弱くなってしまうからだ。

 例えば過去に展示会で出会った顧客企業Aの担当者に、「以前の展示会でお伝えしきれなかったことがあるため、オンライン会議でご説明できればと思い、ご連絡しております」といった旨のメールを送ったとしよう。

 このとき顧客企業Aの担当者が変わっていた場合は、「展示会の内容」は知らない情報である。当然興味を持ってもらえる可能性は低く、打ち手としては効果が薄くなってしまう。このように、顧客データの質が低ければ、CRMを導入しても成果が出にくくなってしまうのだ。

 では、どのような顧客データを登録・更新していけばいいのだろうか。まずはCRMで成果が出にくい顧客データの管理状況を紹介する。自社の顧客データ管理が以下のような状態に陥っていないか確認してほしい。

好ましくない顧客データ管理状態の一例

1.「企業情報」を中心に顧客データを管理
 顧客データと一口に言っても、粒度はさまざまである。粒度が荒い顧客データをCRMに入れても、成果は出づらい。例えば「ウェブページにある企業情報」を顧客データとして管理しても、担当者一人ひとりの情報は分からない。

 接点を持っている担当者の属性により、顧客データを分析した施策が響きづらいこともある。仮に「メールマガジンの開封」や「メールマガジン経由で紹介したセミナーへの参加」などで興味を持っていることが分かっても、担当者が決裁権を持っていなければ商談までつながりづらい可能性もある。

 つまり、企業の基本情報や興味を持ってくれた事実だけでは、成果にはつながらない。重要なのは、メールマガジンの開封やセミナーへの参加などの興味関心度だけでなく、担当者がキーパーソン(決裁権を持つ人)であるかどうかである。キーパーソンの興味関心度が高ければ、商談につながりやすくなるだろう。

 このように、CRMの価値を最大化するためには、企業だけではなく「担当者(個人)にフォーカスしたデータ整理」も必要だ。というのも、企業情報から企業の状態を知りアプローチのタイミングを計るのも重要であるが、結局は個人に対してアプローチを行うゆえに人物情報も欠かせないからである。CRMに登録されている顧客データに担当者レベルの情報が少なければ、今すぐ対策を打った方が良いだろう。具体的な対策については、後述する。

2.「人物情報」が古く、欠けがある
 また、担当者の情報が入っていたとしても、情報の鮮度が悪ければ利用できないこともある。例えば過去にセミナーを受けた顧客に、自社のインサイドセールス担当が電話をかけたとしよう。このとき過去にセミナーを受けた担当者の名前を出したとしても、担当が変わっていれば電話の取り次ぎすらされない可能性もある。

 では、最新の担当者名が分かっていた場合はどうだろうか。過去にセミナーを受けた人向けにお役立ち情報がある点を伝えつつ、最新の担当者の名前を伝えられれば、電話を取り次いでもらえる可能性は高まる。顧客との接点を強化できるため、商談につながりやすくもなるだろう。

 そのため、顧客との接点情報は可能な限り最新の状態に更新し、管理しておくことが重要だ。例えば、メールマガジンの登録、資料のダウンロード、オンラインセミナーの受講などのアクションを積極的に行っている顧客は、サービス・製品に対して、興味関心が高いことが分かる。そのため、顧客の興味関心などの情報を正確に蓄積し、管理しておくことで、最適なアプローチのタイミングを知ることができる。情報の鮮度が低ければ、こういったスピード感のある営業戦略を練りづらくなってしまう。

 上記を踏まえ、顧客データの精度を高めるための対策については次のセクションで解説する。

定番のCRMツールの比較

 CRMツールを選ぶポイントについて押さえたら、実際にどのようなツールがあるのかをチェックし、比較検討してほしい。今回はおすすめのツールを三つピックアップしている。

kintone

 サイボウズが提供するクラウド型の業務改善アプリケーション。2万社以上の導入実績があり、100種類以上のサービスと連携することが可能だ。

 初期費用は無料で、更新は1カ月ごとなので導入ハードルも高くない。ライトコース、スタンダードコースがあり、金額はそれぞれ1ユーザー当たり月額1,500円、月額780円である。スタンダードコースには30日間の無料トライアルもある。

Oracle Sales Cloud

 オラクルのCRMツールで、ユーザーが操作しやすいインターフェースになっているのが特徴。顧客管理機能以外にも、専門家のノウハウをベースにした分析機能や、営業配置の最適化を実現できる予測機能が活用できる。

 「Oracle Marketing Cloud」との連携により、見込み客への丁寧なアプローチや、CRM分析機能の強化が可能になる。

Sales Cloud

 CRMツールで世界No.1のシェアを誇る、セールスフォース・ドットコムのサービスの一つ。さまざまな顧客情報を一元化できるのが魅力だ。

 セールスフォース・ドットコムが提供するツールの中でも、「Sales Cloud」は営業支援に特化したサービスであり、豊富な機能が備わっているのに加えて他のツールと連携させて機能を充実させることも可能だ。

 価格はエッセンシャル、プロフェッショナル、エンタープライズ、アンリミテッドで異なり、1ユーザー当たり月額でそれぞれ3,000円、9,000円、18,000円、36,000円である。最大で30日間無料で試すことができる

CRMの価値を最大化するために、まずは顧客データの見直しから

 これまで解説した通り、顧客データの精度はCRMの効果に大きく影響する。そのためすでにCRMを導入している場合は、顧客データの見直しから実施すると良いだろう。しかし、蓄積している顧客データを一つひとつメンテナンスするには膨大なコストがかかり、現実的ではない。

 また、仮に一度整理したとしても、情報の鮮度とともに効果が落ちてしまう可能性もある。そのため、可能であれば自動的に顧客データを最新の状態にアップデートする仕組みが重要となる。また、営業戦略の立案に役立つ情報も、追加で付与できるとなお良いだろう。

 例えば、Sansanが提供する「Sansan Data Hub」では、登記情報、法人番号、帝国データバンクなどのデータから、自動で顧客データに情報を付加できる。役職ランクや部署などの個人に関する属性も付与されるため、顧客データがリッチ化される。キーパーソンにアプローチしやすくなるというわけだ。

 商談につなげるためにCRMの活用は重要である一方、CRMに入れる顧客データの精度・鮮度についても考慮しなければ、成果は上がりにくい。ぜひこの機会に、顧客データの質から見直してみてはいかがだろうか。

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